ホーム | コラム | 樹海 | コラム 樹海

コラム 樹海

 インカの国は雨が少ない。いや―。殆ど降らないのが真実でリマの自動車にはワイパ―がないそうだ。先だってサンパウロで絵画展を開いたリマに在住する日系のご婦人らが、稲光が飛び交い豪雨がふりそそぐのを見て「こんなのは初めて見た」と半ば感動したらしい。そんな乾燥した国の大統領になったのが、日本人移民の二世アルベルト・フジモリさんである▼農業大学の学長から転じて大統領に当選したときには日本も世界もが驚きびっくりした。南米に移住した日本人移民らの常識では、日系の大統領が初めて誕生するのはボリビアであろう―が、公式・定理のようなものだった。確かに―、ボリビアには中央銀行の総裁がいたし、中将や大将もおり日系の高官が多い。なにしろ、ボリビアの紙幣にはきちんと中央銀行の総裁である日系人の署名がある。次は大統領と夢を見るのは、日本移民ならば誰しもが同じではあるまいか▼そんな「夢物語」を打ち破るようなフジモリ大統領の登場である。あの頃のペル―経済は破綻していたと見ていい。インフレ率は一年間で2300%超だし汚職も蔓延。左翼テロの横行もあって社会的にも混迷していた。フジモリさんは改革路線を掲げ正常化を目指しかなりの成果を見たのは否定し難い。が、政治の現実は厳しく外国へ逃亡の道を選ばざるをえなくなる▼逃れた先は日本である。あれから5年が経つ。そして―突然の極秘出国となりチリでの拘束。ペル―の駐日大使召還もあり、難問の解決は長引きそうだが、政治の話は真に難しい。       (遯)

 05/11/15

image_print