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コラム 樹海

 去る正月の全国高校サッカー選手権大会で、野洲高校が優勝した。滋賀県勢の初優勝だそうである。知る人ぞ知る学校らしい。「やす」と読むのを知らなかった人も多かっただろう。この学校のサッカーの特徴というか、戦術は、個人技を尊重して、プレーさせることだった。いってみれば、ブラジルに似ていた▼ブラジルのサッカーだって、近年は個人技だけに頼っているわけではない。そんなことでは世界の強国を相手にして勝てない。ただ、伝統的に、十一人がトリッキーともいえる、観衆をうならす技を試合にちりばめることができるのはブラジルだ、という定評は、揺るがない。なお確固としたものがある▼野洲の山本監督は個性を重んじ「ボールを持ち過ぎる」選手をも許容する。昨年五月、Jリーグ通算一万ゴール目を記録した前田雅文選手(23、ガンバ大阪)は、野洲高校出身だった▼山本監督は前田が二年生のとき(九九年)、瞬発力と個人技を評価してブラジル留学をすすめた。留学費用を捻出するため、地元の商店街を回って頭を下げ、三十万円余りを集めた。前田はそのおカネで来伯、二週間、グレミオ(ポルトアレグレ)のスタジアムに寝泊まりしてサッカーに没頭した。当時、ロナルジニョ・ガウショがいた▼同年、前田たちは滋賀県大会で決勝まで進み、特徴ある試合を県民ファンに印象づけたようだ。今年、ブラジル風のプレーをする高校が全国制覇したのは、日本サッカー界のちょっとした話題だった。(神)

06/02/24

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