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誰が火中の栗を拾うか=県連役員選挙=2シャッパの可能性浮上=反対派の会長候補は4人=話し合いは継続中

2006年3月17日(金)

 誰が火中の栗を拾うのか――。昨年の文協会長選挙に続いて、今年は県連でもシャッパ(候補者連記名簿)が複数出される可能性がでてきた。反中沢派は、四人の会長候補を検討しているという。状況はまだまだ流動的で、単一シャッパに向けての話し合いが継続されている状態。明確な立候補は定期総会の開催日が決まるまでずれ込むことも予想される。開催日を巡る駆け引きは、これから本番を迎えそうだ。

■4人が候補にあがる■

 一つ目のシャッパは現執行部側の副会長で、昨年のコチア青年五十周年式典を取り仕切った実績もあり、四年前にも名前の挙がった高橋一水・高知会長を中心とするもの。
 もう一つは、吉加江ネルソン・宮崎名誉会長、大西博己・広島会長、加藤恵久・鳥取会長ら二世勢力を中心に、網野弥太郎さんら複数の元県連会長による連合軍のシャッパだ。
 反中沢派の中心人物、吉加江・名誉会長も「松尾さんは四人いる候補の一人。まだ決まっていません」と慎重に言葉を選ぶ。
 監査として、中沢会長追い落としの急先鋒となった監査の大西・広島会長も「(松尾さんは)まだ決まったわけじゃない」と前置きし、複数の名前が出ているとする。十四日昼には、高橋会長を含め両派から数人が集まり、日本祭りの会計問題をどうするか話し合いがもたれた。
 候補の一人、裁判騒動まで起こして二分した福岡県人会をまとめた実績のある松尾治会長(文協副会長)は十四日に電話で、「まだ決まったことではありません」と明言をさけた。事態はまだまだ動いており、「成り行き次第では」と次々に別の県人会長名を並べる。
 「ボクには文協副会長としての仕事がある。五十周年記念誌もやらなくてはならないし」と牽制しながらも、会長候補として決まった場合は「文協副会長は辞めて、県連に専念しなけりゃならないでしょうな」との覚悟もみせた。

■2年前からの確執■

 吉加江・名誉会長は四年前の定期総会では中沢擁立の立役者を演じた。しかし、二年前には反対派に回り対抗シャッパを出そうとしたが十四人を集めきれなかった。結果的に中沢シャッパの信任投票に持ち込んだが結果は二十三対二十一。中沢シャッパは一票差で危うく不信任されかかった。
 二年前に対抗シャッパに組した県人会長は現体制には呼ばれず、県連全体の力を集結した執行部を組めなかった。二年前の確執が今も尾を引いているようだ。
 今月三日の定款改正を問う臨時総会で、中沢会長の三選を可能にする制限を外す投票では、反対二十七、反対十七だった。実質的な不信任決議とみられた。現執行部でありながら反対票を投じた会長までいた。
 中沢会長はこの投票結果に強い不満をおぼえている。「ずいぶん説明したつもりだった」と個人名をあげ、不信感をあらわにする。この情勢を巻き返すような選挙合戦が行われれば、県連を二分するしこりは避けられない。
 シャッパが二つ出た場合、加盟している四十五県人会から十四人ずつとなれば、事実上二分することは間違いない。役員選挙の票数は四十九票(顧問四人、県人会長四十五人)だ。過半数を抑えるには二十五票が必要となる。

■焦点は総会日時へ■

 今後の交渉の大きな焦点として注目されそうなのは、定期総会の日時だ。
 というのも、日本祭りは七月十五日に始まる。初日には県連四十周年式典もある。「早く新執行部が決まらないと本格的な準備ができない」との声も挙がっている。新会長を決めるには、早く定期総会を開いて選挙しなくてはならない。定款によれば四月末までに開けばいい。ただし、四月三十日に開催した場合、日本祭りの準備期間はわずか二カ月半しかない。
 中沢会長は「今まであれだけノッタを持ってこいと言われたんだから、最後の日までその努力をするつもり」と語り、総会をギリギリまで遅らせる可能性を示唆する。日本祭りの会計問題では、ノッタ・フィスカルが足りないことを再三突かれた経緯がある。それを逆手にとった形だ。
 「田畑実行委員長は立派な人。彼の名誉の問題でもあり、そう簡単に受け入れるわけにはいかない」と考えている。「日本祭りはコロニア全体の財産。温かい目で見守ってほしい」と訴えた。
 一方、吉加江名誉会長は「総会が四月の最終金曜では、県連にとって良くない」と考えている。例年は三月最終金曜に行われてきたが、今年はすでに不可能だ。「できるだけ選挙まで行かず、単一シャッパでまとまれば幸いだと思う」。
 もし話し合いが平行線をたどり、松尾さんが候補を辞退した場合、誰を擁立するかでさらなる混乱が生まれ、もっと調停に時間がかかる恐れもある。記念すべき四十周年を一致団結して迎えられるかどうか――事態は予断を許さない状況だ。
 松尾さんは「とにかく、もっと話し合いをして、できるだけ単一シャッパにしないと」と強調する。誰も、県連を二分することを望んではいない。

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