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デジタルTV日本方式=決定まであと一歩か=半導体工場に拘るブラジル=激しい欧州勢の巻き返し

2006年4月13日(木)

 【既報関連】日本からの報道によれば、小泉純一郎首相は十二日午後四時から同二十五分まで、首相官邸の特別応接室でブラジルのアモリン外相ら三閣僚とデジタル放送の規格選定について意見交換し、国を挙げて取り組む姿勢を明らかにした。欧州勢からの激しい巻き返しが起きているが、日本方式で大筋は決定との伯字紙報道も出されている。ただし、日本方式を主張してきたコスタ通信相が交代になるとの観測記事もあり、今後の動きにますます注目が集まっている。
 ルーラ大統領からアモリン外相ら訪日団に許可がでたのは、出発直前だった。というのも、隣国チリのミッチェル・バチェレ新大統領による初訪問(十一日)の日程と重なるため。訪日を優先するほど今回の交渉には力が入っている。
 共同通信によれば、ブラジル側は「日本とブラジルの新たな関係構築のために良い結論を出したい」と日本方式導入に前向きな姿勢をあらわした。小泉首相は「協力が進むことを期待するので、関係閣僚でよく話し合ってほしい」と応じた。
 また、竹中平蔵総務相も会談し、日本のデジタル放送は「移動中でも画像が美しく、携帯電話でも受信できる」とアピール。採用された場合には人材育成などの面で協力すると強調したと共同通信は報じた。
 これに対し、欧州勢の反発は強い。「欧州にも閣僚使節団を送る同様の扱いを」との見出しのついた十一日付けエスタード通信によれば、エリオ・コスタ通信相が先月、訪日予定を発表した直後に、ジョゼ・パシェコ欧州連合大使は同様の閣僚使節団のアイデアを提案していた。
 同エスタード通信によれば、ブラジル政府は依然として半導体工場の誘致にこだわっており、日本との交渉の後、欧州とも話しあうという。工場を建設する場合の資金融資、税金免除、人材育成、港湾輸送における税関の便宜などの支援を申し出ている。
 欧州勢の中心であるオランダのフィリップス社、仏伊系のSTミクロエレトロニクス社はすでに半導体工場を設置してもいいとの意向を示した。ただし、実現可能性の調査に一年程度の時間が必要としており、日本側も同様だ。
 半導体工場視察をふくめた欧州連合からの正式な招待状は、すでにブラジル政府に渡されている。欧州連合としては、今月末から五月には訪問日程が公式発表されると期待している。
 今回、小泉首相ら主要閣僚が直接対応したことで、今までEメールや書簡でのやり取りに終始してきた欧州勢は、絶対に来てほしいとの強い要望をもっている、と伝えられる。
 エスタード通信はこの訪日に関して、続報記事を同日に何本も出す異例の扱いをした。「日本方式に提言を決めるまでの、わずかな調整」と見出しで報じられた別記事には、「微妙な調整が残るのみ。要は、半導体工場設置への具体的な約束のみ」とより突っ込んだ記述がある。
 その記事中でアンドレ・アマード在東京ブラジル大使は、今回の訪日期間中になんらかの文書にサインする予定はないと発言。「だが、ないともいえない」と期待をにじませた。アモリン外相も「いろんなことが理解された。今は、それを明確な形にしなくては」と語っている。
 同記事は、「日本方式が最良であることはコンセンサスを得ており、交渉内容を文章化できれば起きるべきことが起きるだろう」と示唆。欧州勢の足並みが不揃いな例として、STマイクロエレトロニクス社は、ブラジルがどの方式を採用しようがどのチップの生産も可能だと発言したことを挙げた。加えて、米国は半導体工場に関して提案すらない現状だ。
 訪日の成果は報告書にまとめられ、来週、大領領に提出される。ただし、方式発表がいつになるかは未定。「欧州訪問が断念されることになれば、日本方式を支援するグループはさらに勢いずくだろう」と同通信は結んだ。

   コスタ通信相が交代!?

 IT関連サイト(www.convergenciadigital.com.br)は、コスタ通信相が訪日後に更迭される可能性を報じた。連立与党PMDBは同相による一連の強引なやり方に業を煮やし、党として大統領に大臣交代要請をすることを決定した。
 同サイトによれば、ルーラ大統領はこの問題に対応するため、コスタ通信相への訪日許可を最後まで出し渋った。九日に出発した一行から遅れて、十日にようやく日本へ向かったが、「問題は解決されないままのようだ」と報じた。
 大統領は来週、大臣交代に関する何らかの決断をするとみられる。同相はグローボ局出身という背景もあり、日本方式を支持するTV放送業界からの強い意向を一身に受けてきた。早い段階から日本方式への傾倒を明らかにしてきただけに、その進退は注目されている。
 先月「日本方式に決定」との大見出しで先走り報道したフォーリャ紙は今回、「今年中に決定されないのではとTV業界が心配」との記事も出した。訪日に関して大量の記事が出ており、異例ともいえる注目が集まっている。

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