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コラム 樹海

 モジの秋祭りが年々盛大になっている。同地の〃生き字引〃生田博さん(78、二世)によれば、このイベントの初めは一九二九年に総領事館勧業部が主催してモジで開いた蔬菜品評会だったという。「その年に、ボクはここで生まれたんですよ」と日系初の農業博士は胸を張る。秋祭りは今年で二十一回目だが、実はそれ以前に長い伝統がある訳だ▼日本人の同地初入植は、笠戸丸から十年余りの一九一九年ころ。人口はわずか三万人ていどだった。今では三十五万を数える大都市で、日系人口は一割を数える。そのトップには安部順二市長がいる。日系人の働きによりこの町は、サンパウロ州全体に蔬菜や蘭、キノコを供給する基地として広く知れ渡った▼記念体育館は名前の通り、堀井文雄さんが寄贈したものだ。一説には六十万ドルもの費用がかかったとも。二十数年前の建設当時、家族や従業員を引き連れ、自らトラクターを操り先頭きって働いた。今回の開会式にも元気が顔を見せた。彼がコロニアの原点を確立したと、地元一世たちは口をそろえる。「堀井さんがいるから、みんなついていくんだ。それを忘れちゃいけない。ところが今の若い連中は…」と心配する。そんな話を聞くたびに、コロニアとは人のつながりそのものだと実感する▼傘下の日系団体数が減り、求心力も衰えてきたとも聞く。二世中心の執行部に変わって数年がたった。新しく就任した中山会長のもと、今回は百周年に向けて一歩を踏みだした。地方の日系社会の活性化モデルとなるよう、がんばってほしい。(深)

 06/04/13

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