2006年6月1日(木)
日系人受け入れは失敗だった―――。入管行政の改革を検討している法務省プロジェクトチームの座長、河野太郎法務副大臣は五月三十日に同省で記者会見し、近くまとめる改革案で、日系人の在留条件に「定職と日本語能力」を盛り込むことを明らかにした。共同通信、時事通信、朝日新聞など大手新聞が報じた。外国人受け入れ施策を検討してきた同チームは、「定住者」として日系人労働者を受け入れてきた現行制度を抜本的に改める試案をまとめた。改正後は、血縁関係を理由にした新たな受け入れはせず、日本に在留している日系人には、日本語能力が問われることになる。一九九〇年の入管法改正から、十七年。三世の受け入れは日を追って厳しくなっており、デカセギの流れが大きく変わることになりそうだ。
法務省内の入管、刑事、民事各局の担当者で構成される同チームは昨年末から改革案を検討、試案に総人口に対する定住外国人の上限を三%とすることを盛り込んだ。
在日韓国・朝鮮人など特別永住者を除く、定住外国人は現在、一・二%となっており、その割合が多い米国、フランス、ドイツなどと比較したうえでの設定だという。
〇五年末に「定住者」(=三世、帰化人の実子、二世の非日系配偶者など)として外国人登録を済ませている二十六万五千人(約半数がブラジル国籍者)の日系人の在留について、「日本在住の血縁がいること」という条件をはずし、「定職と日本語能力」に改めることを打ち出している。
同省は今年四月二十九日から、定住者在留資格に「素行善良であること」を加え、定住者資格更新時に、無犯罪証明書の提出を義務付けている。
加えて試案では、定住者枠外の四世も対象者になる可能性が検討されていた「研修・技能実習制度」を廃止することも盛り込んでおり、日系人に対する門戸はさらに狭まりそうだ。
警察庁発表の二〇〇五年度犯罪情勢によると、昨年一年間に日本国内で検挙されたブラジル人国籍者は一〇六四人と中国籍犯罪者に次いで二位。来日外国人検挙者の一二%を占めるなど高い割合を示していることも背景にあると見られる。
河野副大臣は会見で、「関係省庁との議論のなかで内容は変わっていくだろう」とあくまで叩き台という姿勢を見せつつ、「日系人の受け入れは、失敗だった」と断じた。
日系人子弟の教育問題などを指摘したうえで、「日本社会として日系人を受け入れる意思も態勢も欠けており、労働力としてしか見ていなかった。失敗を素直に認め、やり直す必要がある」と述べている。