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記者の眼=天野氏説明会=正体見たり枯れ尾花

2006年6月6日(火)

 日本政府への神通力は幻だった?――。一日夜、文協小講堂で行われたリベルダーデのジャパン・センター建設に執念を燃やす天野鉄人氏(68)の説明会である。
 「二世は百姓をやっていればよかった」「私がいなくなれば百周年は大変なことになる」「この状態で皇室を呼んで、恥ずかしくないですか?」「ブラジル人の精神復興に日系人が立ちあがるべき―これは天からの啓示です」など、以前見せた迷フレーズのキレは今回、見られなかった。
 大講堂から、急遽変更した小講堂の会場を埋めたのは、意外にも前回より多い約百人。天野氏自身、「五十人来るかなあ」と心配していただけに胸をなで下ろしたようだ。
 しかし、「時間の無駄だったね」「あんまり面白くなかったなあ」などといった出席者の感想から見ても、以前は多少なりともあった「もしかして」という天野氏への期待は違った方向へ向かっているようだ。
 「〇八年移民の日」のイナグラソンを確約していたジャパン・センター。その建設総予算五十億円の集金に関して、「自分が一切責任を負う」と荒かった鼻息はなりを潜めていた。
 「外務省人事を以って」示すとした〃政府との強いパイプ〃には一切触れず、文協ビルの場所でのビル建設案など、説明に一貫性がないことも説得力を欠いた。明らかに前回の勢いは削がれていた。
 天野氏が持つリベルダーデ区の土地に先月二十五日、視察に訪れた西林万寿夫総領事は、「行ったからといって強い興味があるわけではない」と記者懇談会で強調。政府からの資金云々については、「今の状態では、九九%ない」と断じていることからも、ほぼ絶望的と見ていい。
 迷走する天野氏の発言は
終盤になり、思わぬ展開を見せる。〃ある人〃に頼めば何とかなる、というのだ。天野氏をして、「尻も舐める」「身を捧げる」と言わしめるその人物とは、早ければ来月にも来伯する神内良一氏(プロミス名誉会長)のこと。
 しかし、天野氏は日本で何の調整もしておらず、門前払いに近い対応を受けたことを明かし、「リベルダーデをその人の名前だらけにするくらい歓迎すれば、何とかなる」。
 結局は「日本政府の見込みはなさそうだから、コロニアの皆さん、神内先生にお願いしなさい」というのだから、―正体見たり枯れ尾花である。
 さらに、「十日以内にコロニアの総意を取ったという連絡がなければ、私は動かない。これが最後のチャンス」という発言など、支離滅裂である。
 しかし、古希を二年後に控え、凄まじいまでのパワーである。前回帰国してから、今回の来伯までの約三カ月、ブラジルにかけた電話代に、エコノミーではないであろう飛行機代の三倍は使ったというから、相当な額といえる。
 なお、天野氏は、六人の孫がいるそうだが、名前はほとんど覚えていないという。自分の孫より、ブラジルの日系子弟の方に関心があるとのことだ。口ぐせの「家族よりもブラジル」は伊達ではない。
 七月に再来伯する天野氏。次回はどのような形で、日系コロニアの将来に命を燃やす男の人生劇場を見せつけるだろうか――。
         (剛)

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