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コラム 樹海

 国家が考えること、やることは、時代が違っても、似ている――日本における外国人入国管理の改革を検討している法務省のプロジェクト・チームの河野太郎座長のさきの発言をみて、そう思った▼一九二三年十月、レイス議員が下院に提出した移民法案と「数字」がぴったり同じだったのは驚きだった。同法案は、黒人の入国は全面禁止、黄色人種は(現在住者の)三%に制限するというものだった。河野座長チームの試案は総人口に対する定住外国人の上限を三%にするというものである▼発言の背景がどうあれ、座長が「日系人の受け入れは失敗だった」と言及したのはショックである。上限を設定しようとしているのは、日系を含むブラジル人についていえば、要するに、労働をせずに悪事に走り、日本国内の治安を悪化させる者がいるのが理由である。レイス議員のは背景に「人種差別」がはっきり読み取れる。欧州系人の移民についてはおかまいなしだったからだ▼法案提出の年は、笠戸丸から十五年、配耕された耕地からの〃夜逃げ〃がまだ絶えなかった頃だろう。耕地のドーノたちの意見が強く反映されていたに違いない。しかし、当時、日本人移民はほとんど法は犯さなかった。時を経て、独立農に成長した後の寄与は高い評価を得るようになった▼在日ブラジル人たちも既に二十年の歴史を刻んでいる。近い将来、その国民性と文化が、異質だが学ぶべきところもある、といった受け取られ方をされるようになるだろう。(神)

 06/06/09

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