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◇コラム 樹海


コラム 樹海

 具象画の展覧会を開くというので文化協会に足を運び「美展」を見学。きちんとは覚えていないけれども、60年代の半ば頃からコロニア画壇の主流は抽象画が占めるようになり、昔ながらの具象画は隅っこに追いやられる風潮が長く続く。ある画家は「具象は絵ではない」と批判したとかで小さな論争が起こったとの話も耳に▼猫も杓子もが誘蛾灯に誘われるウンカの如く抽象に走ったのも滑稽な話だし、美術展で「どうしてこれが」と思うような作品が堂々の入賞もあったと記憶する。無論、絵画論にはまったく疎く無知であり、「公案」を重んじる禅問答は苦手。「こんにゃく問答」が好きな凡人の多いのが―この世の常である。「20世紀は抽象の時代」だそうだけれども、15世紀もあれば18世紀もあるし歴史の流れとしては具象画が芯である▼「聖美会」を創立した故人の高岡由也と玉木勇治は、絵を志してリオまで徒歩で辿り付いたの伝説が今に残る。農村風景の半田知雄や晩年にブラジルの自然の雄大さを大胆な構図と色彩で描いた田中重人らの画家はもういない。彼らは絵が売れないためにネクタイを染めて売り歩いたそうだ。満足なアトリエもなかったろうが、そこにあるのは「絵との闘い」ではなかったのか―▼「美展」はいい。昨年より規模が小さくなったようながら質的な向上が見られるし、何よりも展示されている作品から滲み出る「人間臭さ」が胸に響き素晴らしい。作品の巧拙は別に論じるとして―コロニアが求めているのは、こんな「人の絵」であり、有機的な繋がりと「人と人が結びつく」ような絵画―そんな気がする。 (遯)

06/07/15

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