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青空の下、2メートル四方の絵を描く=自閉症児学級、画家の久山さん迎えて

2006年9月20日付け

 十五日に来伯した画家の久山房子さん(くやまふさこ、在ウルグアイ日本国大使夫人)が十八日、サンパウロ市V・マリアーナ区にあるサンパウロ自閉症児学級で、特別アート教室をひらいた。教師や保護者らが温かく見守る中、児童たちは青空の下に広げられた大きな白紙にむかって、楽しそうに絵を描いていた。
 在ウルグアイ日本国大使夫人の傍ら、画家としても活躍する久山さん。東京でも「小さなピカソ」という教室を開き、長年におよび子どもたちに絵の楽しさを伝えてきた経験を持つ。
 これまで自閉症の子を教えたことはなかったが、今年ウルグアイにある自閉症児自立訓練施設「モンテビデオ・ヒガシ学校」で絵画教室をおこない、アートを通して自閉症児の心が開かれていくのを実感。「ウルグアイの子たちだけではもったいない。是非サンパウロの子どもたちにも」との強い思いから、今回自費で来伯した。
 この日おこなわれた午後の授業では、屋外に二メートル四方の紙を用意。紙の上に寝そべった児童らの体にあわせて、クレパスで線をなぞっていった。浮かび上がった大小様々な囲みの中に、楽しそうに色を塗っていった。
 筆のタッチもそれぞれで、線からはみ出た部分が他の色と混ざりあい、独特な色が表現された。授業が始まるまで泣いていた児童も、気付けば夢中に。個性豊かな作品ができあがり、「まるで小さなピカソね」と声がきかれた。
 「心が踊るような楽しいことをすることが大事」と話す久山さん。絵を描くことを通して「楽しい、きれい」と心から実感することが「閉ざされた」子どもたちの心を開いていくきっかけにつながるという。「今後は規律正しい生活療法と組み合わせていくといいでしょうね」と語った。
 授業にはウルグアイで長年自閉症児の教育にたずさわり、現在同学級で指導をおこなう三枝たか子さんも参加。「久山さんは子どもたちに愛情をもって接するボランティア精神の持ち主です」と称えていた。
 現在の学級は、本門仏立宗日教寺の部屋を間借りする形で運営されている。同寺の住職らの理解もあって「子どもたちを温かく受け止めてくれる環境が何よりもありがたい」と三枝さんは話す。久山さんも「日本ではこれだけの環境はなかなかありません」と関係者に感謝の意を示していた。
 十九日も授業がおこなわれ、演芸会につかう舞台背景用の大きな作品が描かれた。これらの作品は十二月の発表会で展示される。
 現在、教員候補を募集中。「ボランティア精神の持ち主で温かい気持ちで子どもたちと接することができる人」が条件。問い合わせは、同学級支援グループの矢野さん(携帯11・7396・1361)まで。

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