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身近なアマゾン(2)――真の理解のために=無垢なインディオ部落に=ガリンペイロが入れば…

2006年9月23日付け

 □インディオ部落に現れるガリンペイロと熱帯魚漁師(1)□
 熱帯魚採取人が、インディオの住む山奥に入った時の感想と、そこで同じような仕事をしているガリンペイロ(ブラジル語で「金堀り人」「山師」の意味)のこと、そしてプレコストムスと呼ばれる不気味なヨロイナマズのことを紹介する。
    ◇
 麻薬、売春、性病、この三種の単語を総称して〔三悪〕といった。二昔前の三悪追放キャンペーンの内容である。最近はほとんど死語になってしまったのか、日本ではあまり言われなくなったようだ。
 しかし、その代わりに偉大な?チャンピオンが登場した。その名もエイズ、三悪を従えた親分的イメージで、突然、人間世界に割り込んできた。
 そのエイズが、最近未開のインディオ部落にまで侵入してしまって大きな問題になっている。アマゾン地域の熱帯魚とインディオは、熱帯魚採集人にとっては、切っても切り離せない関係にある。
 アマゾン奥地に出向いて、未発表種の魚が採れるようなところには、大抵インディオがいて、われわれが溝掃除(魚採り)をしていると、珍しそうに見学やって来る。
 さて、この未開の地で同じような溝掃除をやっている人達に、ガリンペイロ(金堀人)がいる。ブラジル語では、金が採れる場所を〔ガリンポ〕と呼び、そこで金を漁る人達をガリンペイロという。ちなみに宝石に関しても同じく採集場所をガリンポ、採集人をガリンペイロという。
 筆者が自分で言うのもなんだが、われわれ魚採集人は素朴で正直な良い人間がほとんどだ。
 しかし、ガリンペイロ(金堀人)は仕事柄、獰猛な人達が多いようで、前述のエイズ率いる三悪を平気でインディオ部落に持ち込んでしまった。
 ガリンポ(金堀場)は大抵人里離れた原始林の中にあり、法律や秩序のない自治区になっている。自治区といったら聞こえはよいのだが、そこは一八〇〇年代の西部劇そのままで、ドラマチックな無法者の世界が現存しているところと言える。
 金(キン)という人を狂わせてしまう物を、川底から拾い集める仕事は、確実に命がけの仕事なのだろう。
 そんな場所に、何も知らない無垢なインディオ娘が現れれば、当然トラブルが生じることになる。性病が流行し、エイズが蔓延することになってしまう。
 元来の梅毒、淋病などの性病であれば、治療の方法も確立されているが、このエイズがインディオ部落にはいったら、どのように対処すればいいのか、大きな問題である。
 ここでブラジルのガリンポについて解説しておく。
 前述したように、ガリンポというのは大抵の場合、人里離れた秘境にあって、ブラジルでは大半がインディオ居留地内とか、自然公園や野生動物しか棲んでいない地域にある。
〔勝手に金が採れる場所〕があるのなら、誰だってその金を採って大金持ちになりたい、それが人情ではないだろうか。
 現代経済の価値基準のひとつが金によって決められているわけで、それなら誰だって金(キン)が欲しいのは同じではないだろうか。そういう観点からすると、当然のように金堀りは命懸けの職業になる。
 筆者が観察するには、ガリンポには3パターンあると思う。
 第一、金属探知機によって鉱脈を見つけ、山脈や平地を掘削して、大掛かりな鉱山形成するもの。一時代盛況だったセーラ・ペラーダという金鉱山(アマゾンの河口部ベレン市のあるパラ州の中央山岳部に位置している)に代表される。
 第二、アマゾン水系の大半の支流の川底には、砂金が流れており、それを川底からポンプアップして、水銀吸収し、その中の砂金を集めるもの。
 第三、個人でアマゾン支流奥深く入って行って、川底から人力によって拾い集めるもの。
 インディオも金(キン)そのものの価値は知っているが、ある種の集団に属さない限り、普段の生活に金(キン)はあまり関係ないので〔インディオが金を掘っている〕という話はあまり聞かない。筆者も魚採りに回っている間に、いつの間にかガリンポに迷い込んでいた、という経験が時々あり、かなりガリンポのことに詳しくなった。しかし、ガリンポの中に住んで、ガリンペイロを実践したことはない。つづく         (松栄孝)

身近なアマゾン(1)――真の理解のために=20年間の自然増=6千万人はどこへ?=流入先の自然を汚染

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