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身近なアマゾン(14)――真の理解のために=散々だった夜の魚採集=「女装の麗人」に遭遇、逃げる

2006年12月5日付け

 □ペルー国境の町で□
〔後編〕夜の採集編
 前回の続きで、その夜の話。止せばよいのに、昼の採集が駄目なら夜の採集をやってやろう、と思いついた。
 町に戻ってから、この街の中心を流れている小川(ジュルア川の支流で、本流は町の前を流れている)の様子を観察、町の中央部を抜けて、魚のいそうな綺麗な流れがあるのを確認しました。「シメ シメ!」
小川の両側の土手がアベニーダ(大通り)になっていたので〔今晩人々が寝静まったら一丁ここで採集してやろう。夜ならきっと変わった魚が採れるだろう〕と思ったのだ。
 その晩、午前二時の丑三つ時、人々が寝静まって、誰一人通りにいないのを確かめながら、その町の中心部を流れている小川にやって来た。アマゾンの最果ての、こんな行き詰まりの僻地に来て、しかし、ここは非常に電気事情がいいので助かった。中央大通りの川に沿って、強烈な街路灯がアカアカと輝いて真ん中の小川を照らしている。
 その川に、付近に誰もいない深夜、筆者一人で入っていった。
 懐中電灯で照らして見たのだが〔ウッヒャー〕と思った。川には何もいなかった。それでもしつこく諦めず、一時間くらいその川を上流に下流に進んだのだが、何もいなかった。
 結局諦めて、引き返してホテルに帰ろうと土手に上がった。そして誰もいない大通りを一人で歩いていると、川を挟んだ反対側に、突然、人が現れた。川を挟んでいますが、だんだんとその人影が近づいて来る。近づくに従って、その人が女装しているが、明らかに男であることが分かってきた。スカートから、ブットイ毛ズネが出ていて、ハイヒールをはいている。化粧してはいるが、いかついアバタ顔にピアスが[キラリ]と光っている。
 その女装の麗人が、川を挟んですれ違いざま、突然筆者に声をかけて来たのだ。
「ボア・ノイテ(今晩は)今日飛行機で着いた日本人でしょ?ホテルに行こうよ」
 突然の彼女?の申し出に、私はビックリして、泡食ってしまった。
「いや、いらないよ。ノー・オブリガード(ありがとう)ノー!ノー!」と言いながら、完璧にビビってしまって、それ以上言葉にならない。
 知らぬ顔で、歩く速度をあげた。なにしろ辺りは誰もいない静寂の大通り、昼間にぎやかな所ほど夜は恐ろしい、という。かなり早足で歩いて、怖々振り返ると、そのおカマさんが、ハイヒールを手に持って、川を渡ってこっち側に来ようとしているのが見えた。
 その姿が私の脳裏に写った瞬間、胸がドキドキし始め、心臓の鼓動が極度に早くなって来るのを感じた。一目散に走って逃げた。もうわけもなくドキドキしながら、すっ飛んで逃げた。カマさんが走って追いかけて来る気配があったので、振り返ることも出来ず、ヒヤヒヤしながら夢中で走った。心で叫んでいた。「南無阿弥陀仏 なむあみだぶ」
 なんとか逃げ切って、ホテルの入り口までたどり着いて、ようやく一安心、ホッとした。〔もうここまでは追いかけて来ないだろう、ざまー見ろ〕
 しばらくは動悸がおさまらず、大変だった。
 教訓その一、深夜の魚採りは恐ろしい。
     ○
 二〇〇五年六月、久しぶりにこの町をたずねた。市街地中央を抜けていた小川にはコンクリートの蓋がかけられ、暗渠になっていて、川の上までもがアベニーダ(大通り)となっていて、かつての面影はまったく消えていた。
 かにかくに クルゼイロ村は遠かりし 思い出の川 思いでの道
   つづく (松栄孝)

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