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身近なアマゾン(6)――真の理解のために=元来マラリアはなかった=輝く清流に蚊生息できず

2006年10月3日付け

 □未開インディオに残された道(3)□
 そこには管理官と看護婦が常駐しており、彼らインディオを侵入者や病気から守っている。特にマラリアやインフルエンザ、結核が彼らの命取りになるそうだ。
 このスタンドに来ていたインディオたちは、すでに文明と同化しつつあるが、そうでない部落もあって、彼が言うのは、〔自分達はシャツもズボンも身につけているが、この国道側七キロ入った所に自分達の親戚の部落がある。そこはまだ文明を取り入れていないので、裸のままの生活をしている。我々とフナイの人間以外は受け入れない〕、[…が、日本人、あんた行ってみたいか?]と聞いてきた。興味を引かれたのだが、次回にしておいた。
 彼の話では、居留地が国道からあまりに近いため、部落の左側を流れる川にはガリンペイロ(砂金採集人)が入って侵略され、右側の山は材木業者の盗伐にあっていて、現在は部落の存亡の危機に直面しているという。
 特にガリンペイロの侵入は、彼らに非常に害が及ぶそうで、聞いて驚いたのだが、このアマゾン奥地のマラリアの発祥地のようなインディオ居留地には、元来マラリアはなかったのだそうだ。
〔マラリアは、アフリカ黒人が奴隷として導入された西暦一五〇〇年代にアフリカから持ち込まれた〕という。
 ガリンペイロによって汚されることのなかった川は、クリスタルのように輝く水で、この原始林から流れ出す清流には、本来蚊の幼虫、ボウフラは生息できないそうである。しかし、ガリンペイロによって一旦水が濁らされ、汚染されると、そこにボウフラが湧いて、マラリアが入ってくるらしい。
 考えてみれば、インディオがこの南米に入った、といわれる五万年とか三万年、一万年以上前から、この地にマラリアが風土病としてあれば、インディオは滅亡していたはずだ。ちなみにアフリカには、マラリアに抵抗力のある免疫をもった種族がいるそうだ。現在は、フナイの医者と看護婦が必死でマラリアから彼らを守ろうとしている。
 盗伐については、筆者も見ているが、原始林の中に〔これ〕という有用大木を見つけると、そこまで大型トラクターで入って行って、チェーンソーで切り倒し、適当な大きさに切って運び易いサイズにして、国道までトラクターで引っ張り出し、クレーンのついたトラックで輸送用のトラックに積み、一~二日の仕事で持ち逃げしてしまうのだ。
 この方法だと短時間で仕事が済み、現行犯で捕まる確率が少なく、特にこういう犯行は現行犯でなければ捕まらないのが習慣で、貯木場に持ち込んで、仕事は終わり。伐採証明書がつけられて、市場に出るわけである。
 こんなことが続けば、自然が全部駄目になってしまいそうだ。しかし、全てが商売、そして生活に結びついているので、なかなか取り締まれないのも現状のようである。
 筆者も文明側にいる人間なので、とやかく言えないのだが、彼ら滅び行くインディオを前にしていると、本当に気の毒になる。人間も動物、天然記念物制度が必要なのだ。
 この矛盾をどう説明したらいいのか〔こんなことを考えることが、我々の未来を考える次元と同じ位置にあるはずではないか〕と考えるようになった、この頃である。つづく (松栄孝)

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