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身近なアマゾン(5)――真の理解のために=先進地域の医療分野に貢献=略奪され恵まれぬインディオ

2006年9月28日付け

 □未開インディオに残された道(2)□
 ヨーロッパの白人からいうと、〔日本人は別〕といっても、黒人、黄色人は本来すべて先住民の部類と見ている節がなくもない。
 他方、日本国内では、日本人という民族の起源がはっきりしていないので、日本人が日本に定住する以前からこの土地に住んでいたとされる東北、北海道のアイヌ民族、現存しないが、九州にいたとされる伝説のハヤト民族、それに、沖縄古来の琉球王朝の人々などが、日本における日本人の先住民に挙げられる。
 世界にはこれら先住民と呼ばれる人達が約七十カ国、およそ三億人いるといわれているそうだ。この中の約五千万人が、熱帯雨林に暮らしていて、現代の先進地域の食文化や医療分野に貢献している。
 資料によると、彼ら熱帯地域先住民が提供している医療品原料は、四百三十億ドルに達するとされているが、しかし、現在の発展した平等と言われている社会においても、製薬メーカーやその出先機関によって大半が略奪されており、先住民には何の恩恵も与えられていないのだそうだ。
 ブラジルにも、かつてはインディオが三百万人もいたそうだが、現在では推定十五万人、減る一方である。そういう流れで言うと、未開インディオは同化されるか、滅んでゆくかしかないのだろうか。寂しいことだが、恐らくそうなるのだろう。
 話を戻して、このガソリンスタンドに現れたインディオたちは、以前は狩猟と漁労と畑作で自給自足の生活をしていたという。しかし、今はこうして二カ月に一回、一週間ほどこのガソリンスタンドに出てきて商売して、現金収入を得て、いろいろな生活必需品を買って部落に帰るそうなのだ。
 彼らの持ってきている商品は、自分たちで作った民芸品、手工芸品、植物の根、幹、葉、種などの生薬の原料や強壮剤の漢方薬が中心である。
 ムラート(白人とインディオの混血)の彼が筆者に薦めたのは、やはり木の根を干したもののようで〔マラプアマ〕という、いかにも男に効きそうな棒きれの束だった。
 彼らに言わせると、これをお茶にして飲めば、一晩中パウ(ブラジル語の隠語で男性の一物を意味する)がレバンタ(起きるという動詞)しているそうである。「かあちゃん大喜びするよ」というのだ。
 結局、私はこれと釣針とを物々交換したが、現在のところは試していない。試して、夜中に大騒ぎになったら近所迷惑?だからである。
 民芸品は、エマ(南米産のダチョウでエミューに似ている)の羽で作った大小のハタキ、植物の蔦で編んだ籠の大小いろいろ、装飾用の弓と矢のセットなど。それに小鳥籠に入った中型の綺麗なインコが二ツガイ、こんな商品だった。
 彼が私に特別に見せてくれたのが、彼らが現在、現実に使っている本物の弓と矢であった。そこで実際に弦を張ってくれたのだが、ヤシの幹を削って作ったこの二メートル近くある弓に、一メートルもある矢をつがえて、力いっぱい絞って撃てば、人間なら三人くらいは串刺しにする威力があるそうだ。
 これなら〔大きいオンサ(豹)も一矢で仕留める〕と言って自慢した彼の言葉が、信用にたるものだと納得させられたのである。
 彼らの居留地の入り口には、たいてい政府直轄の管理事務所(フナイといってFUNAI=FUNDACAO NACIONAL DE INDIOの略=インディオ国立基金)の事務所がある。つづく           (松栄孝)

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