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報われた農業分野での貢献=高梨さんらに「山本賞」=カンナ、蘭、ぶどう、ゴイアバ=光る品種改良、技術革新

2006年11月28日付け

 農業分野の貢献者を表彰する山本喜誉司賞の授賞式が二十四日、ブラジル日本文化福祉協会ビル貴賓室でおこなわれた。同賞選考委員会(杓田美代子委員長)の主催。三十六回目。受賞した五人の家族や関係者、日系団体の代表者など三百人以上がお祝いに駆けつけた。あいさつに立った上原会長は故山本喜誉司氏の功績を称えたうえで、同協会発足の流れを説明。受賞者の一層の活躍を期待したいとした。
 杓田委員長は、選考までの経緯を述べたあと、授賞式開催に関わった関係者へ感謝の意を表した。式典後には「〇八年には受賞者の枠をできるだけ増やし多く人を顕彰したい」と意欲を見せていた。
 このほか西林万寿夫サンパウロ総領事や野末雅彦JICAサンパウロ支所次長、松尾治県連会長、スダメリス銀行の清水オリビオさんらも来賓として駆けつけ、祝辞を述べた。
 式典後は日本食などを囲んで乾杯。それぞれの受賞者は、家族らと一緒に大きな記念プレートや花束をもって記念写真をとっていた。
 「私の人生は失敗だらけだった。失敗のコンクルソがあったら優勝できる」と式典であいさつしたのは、洋ラン栽培の普及に貢献した高梨一男さん。各受賞者の功績を紹介したうえで「波乱万丈な人生だったが、今日があるのは大勢の方の援助のおかげ」として謝意を表した。
 高梨さんが高級洋ランの栽培をはじめたのは一九八五年ごろ。ハワイから苗を導入し「栽培当初はプラスチックの造花」と揶揄されることもあったが、「まだ見慣れていないだけ」と辛抱強く研究を重ねた。
 ブラジルでいまや高級花卉の一つとなったランについて「これだけみなさんに知ってもらえるようになったことは嬉しい。実績ができた」と喜んでいた。
 ぶどうの新品種開発に貢献した高倉定雄さんは、今回の受賞を「思ってもなかったもの」と笑顔。一昨年あたりから葡萄の生産がまた盛り上がってきたとして「これからも本気でおいしい葡萄をつくっていきたい」と胸を弾ませていた。
 選考委員会は山本氏が農業技術者の育成を目的に設立した日系農業技術研究会(ABETA)がはじまり。九年ほど前から文協が選考、授賞を引き継いできたが、昨年から日系農業団体による選考委員会が受賞者選考にあたっている。
 選考基準は、「品種改良」「技術革新などの農業専門分野での功績」「農業分野へのあらゆる社会的貢献度」のいずれかに該当し、地域から推された人。昨年までに受賞した農業者は百四人に上る。
 以下受賞者の紹介。
【松岡静男】四四年生まれ。サンパウロ州コロアドス市出身。サンパウロ州アララス市在住。サンパウロUSPルイス・デ・ケイロス農学部卒。七三年、農学博士号取得。受賞理由=サトウキビの品種改良。
【有薗秀人】五二年生まれ。サンパウロ州ラヴィニア市出身。サンパウロ州カンピーナス市出身。アララス大学生物科学部卒。九九年、農学博士号取得。受賞理由=松岡氏と同じ。
 現在、ブラジルで生産されるサトウキビの約五〇%が両氏の研究から誕生したRB種。従来のものに比べ糖度も高く、抗病菌性や生産性にも優れる。同種の栽培はその副産物を含めた製造工場の発展にも寄与し、地域産業、経済に大きな貢献をしている。
【高梨一男】二三年生まれ。千葉県館山市出身。サンパウロ州サン・ジョゼ・ドス・カンポス市在住。受賞理由=洋ランの栽培及び普及。無菌培養施設を整えたほか品種改良もすすめ、大量生産方式を一早く導入した。
【高倉定雄】三九年生まれ。サンパウロ州ポンペイア市生まれ。パラナ州フロライ市在住。受賞理由=ぶどうの新品種「紅高」の選抜および普及。
【佐藤ペドロ】三六年生まれ。サンパウロ州リンス市出身。リオ州ノーヴァ・イグアスー、チングア区在住。受賞理由=ゴイアバの小川種から優秀固体の選抜及び普及。

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