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臣道連盟だった沖縄移民=県系二世のオクバロさん=「スージト」で父の苦悩描く

2006年11月28日付け

 ブラジルへ渡った沖縄移民の一人で「臣道連盟」の一員でもあった、故保久原(ほくばる)正輝(まさてる)氏の人生を二世の息子が描いたノンフィクション小説『Sudito~スージト~万歳正輝』(ジョルジ・オクバロ著)が二十八日、テルセイロ・ノーメ社から出版された。
 非日系のフェルナンド・モライス氏によって、二〇〇〇年に発売、ベストセラーになった『Coracoes Sujos』(コラソンイス・スージョス、Companhia das Letras社)。戦後の「臣道連盟事件」を扱い大きな反響を呼び、ジャブチ賞を受賞したことは記憶に新しい。
 「Sudito」は現在、エスタード・デ・サンパウロ紙で活躍している日系二世のジャーナリスト、オクバロ・ジョルジさんが、父親を中心とした家族の歴史に、勝ち負け事件などの日本移民史を重ねた力作。
 テロ事件の主犯者たちを主な登場人物にしたフェルナンド・モライス氏の作品に比べ、この作品の主人公は、臣道連盟の一員だった一般の移住者を物語の芯に据えたところに特徴がある。
 主人公は著者の父親、正輝さん。
 一九一八年、十三歳の時に第六回若狭丸で日本を後にした正輝さん。数年後にはお金を貯めて故郷の家族の所へ戻ろうとサントスの埠頭に立った。
 そして戦後、臣道連盟のメンバーとして警察に捕まり、裁判にかけられ釈放される過程で日本の敗戦を認めなければならなかった。
 警察から戻った父親は、家庭でもポルトガル語を使うように決断し、日本語を習った長男は徐々に使い方を忘れ、下の子どもは習うことすらなかったという。
 琉球王朝時代の伝統の中で育ち、ブラジルに来ても他県の日本人からは同じように扱われなかったコンプレックスも抱えていた主人公。同書では、枢軸国側の移民への強い同化政策をとったジェツリオ・ヴァルカスの独裁政権と日本の軍国主義の狭間に置かれ、日本人から同じように扱われなかったが、日本の敗戦を認めたくなかった沖縄人としてのジレンマが家族の歴史を通して描かれている。
 オクバロさんは、USP工学部で学んだ後、ジャーナリストとなり、バンデイランテス宮、サンパウロ州政府などの広報機関で働いた。八九年からは、エスタード・デ・サンパウロ紙やジョルナル・ダ・タルデ紙の編集に関わるようになった。
 同書は五百三十六ページ、六十二レアル。出版に当たっては、宮坂国人財団とブラジル日本移民百周年記念協会が後援した。
 出版記念パーティーは二十八日午後七時からレストラン新鳥で行われる。

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