ホーム | コラム | 樹海 | コラム 樹海

コラム 樹海

2006年12月28日付け

 また悲しい事件が起きてしまった。静岡県焼津市で日系親子三人を殺した白人系ブラジル人の容疑者は、あらかじめ買ってあった航空チケットでサンパウロ市へ高飛びした。もしかして、ネーヴェス容疑者は今もサンパウロ市周辺におり、ぬくぬくとナタールと新年を迎えているのかと思うと、さらに胸が痛む▼海外逃亡というのは古典的な方法だが、残念ながら今も有効だ。このような「逃げ得」を許さないためにも、ブラジル刑法によって日本国内の犯罪を裁く代理処罰を迅速に進め、逃げ切れないとの認識を広げることが肝要だ▼九九年に浜松市で女子高生、落合真弓さんをひき逃げ死亡させたミウトン・ヒガキ容疑者は、帰伯逃亡後にサンパウロ市で結婚し子供もいると聞く。一月に代理処罰裁判の第一号が始まったら、ヒガキ容疑者も子の親として世間に恥をさらすのは気が進まないだろうが、一人娘を亡くした落合敏雄さんはもっと辛い思いでこの八年間を過ごしてきたことも受けとめるべき。これを機にしっかりと罰を受け、日本の遺族に謝りに行くぐらいの反省心を見せてほしい▼焼津の事件の場合、被害者もブラジル人だけに、ブラジル政府やマスコミの積極的な姿勢を期待したい。実際、このようなケースは両国の迅速な取り組みなくして解決は遠い▼グローバル時代を反映して、犯罪も簡単に国境を越えるようになった。警察組織や司法制度が時代に合わせて柔軟に対応しないことは、それだけで、犯罪者に味方しているようなものだ。国境は犯罪者を守るためにあるのではない。(深)

image_print