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コラム 樹海

2007年1月12日付け

 中国が唐の時代、楊貴妃が華南から遠路、都長安に運ばせたという言い伝えがある果物レイシ(茘枝と漢字をあて、ライチーともいう)。今季は豊作だったようだ▼初夏の果物で、ブラジルではナタール前に、市場にどっと出回る。どっと出回ったところで、産地を注目した。ブラジルでの最初の多産地はバストスだったと記憶がある。それが、いつのまにかレジストロ、さらにピラジュあたりにも広がっている。先鞭をつけたのは日系農業者である▼高価に売れるとなれば、たちまち、栽培者や栽培地が拡大するのは、ほかの農産物と同様である。消費者には嬉しいが、生産者の気持は複雑だろう▼昨年のナタール前、東洋街の食料品店では、一パコッテ二レアルまで値が下がった。新記録だろうと思う。ところがである。客の購買力は旺盛であった。売れるとみるや、二時間後くらいに、これを三・五レアルに値段を付け替えた店があった。これぞ「ブラジル流」。それでも山積みされていたパコッチはみるみる内に消えた▼レイシは、痛みやすい果物だ。放っておくとすぐに鮮度が落ちる。家族の中にベトナム人の嫁がいるところの主婦が、果皮を剥いて冷凍にすれば、日保ちし、美味しいと教えてくれた。これもブラジル故だ。ベトナムがレイシの〃本場〃の一つであることに気がついた。あとで調べたら、百科事典にもその保存法が記載されていた▼生(な)り年の翌年は収穫が少ないという。来年は高級果物に逆戻りするかもしれない。(神)

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