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元練習艦隊乗組員、ブラジルを懐かしむ=歳時記を贈られて=「移民の道」に感慨=広島県在住、伊豆野さん 坂本さんと34年も文通

2007年2月8日付け

 一九七二年八月、海上自衛隊の練習艦隊「かとり」「もちづき」が来伯、そのとき乗組員だった自衛官(一曹)の一人が今、年金生活者の七十歳になっている。広島県安芸郡海田町在住の伊豆野和信さん。奇特な人で、三十四年間、当時サンパウロで世話になった人と、毎年欠かさず文通を続けている。伊豆野さんは昨年、文通している人から『ブラジル歳時記』(佐藤牛童子編著)を贈られた。この本で、一度土を踏んだブラジルを懐かしんでいるという。
 三十四年前、半舷上陸時、伊豆野さんは、サンパウロ市モオカ方面に住んでいた幼なじみの家を訪問しようとしていたが、皆目行く先の見当がつかず、広島県人会主催の歓迎会の席上、県人会の役員に教えを請うた。そのとき、モオカまで乗用車で案内したのが、いまも俳句づくりに余念がない坂本美代子さん(80、サンパウロ市在住)だった。
 伊豆野さんは、義理堅く、まめな人だ。坂本さんに季節のこと、自身の家族の様子、年金生活状況などを、知らせてよこす。今年に入って最初の手紙は、正月過ぎに届いた。昨年、坂本さんが送った『ブラジル歳時記』へのお礼だった。
 伊豆野さんが書いていた。「私のような才能の無い人間には勿体ない本だと思う。しかし、この本は、日系社会や移民の苦難の道、それに異国での風習とか、いろんな日系の人たちの歴史が俳句に込められている。日本では見られないブラジル独特の動物や植物のことが俳句に入ったりしており、たいへん貴重な資料になっている。
 私のような、遠洋航海でブラジルの四つの港(レシフェ、リオ、サントス、サルバドール)に寄港しただけの者には、ブラジルについてわずかの知識しかなく、動植物、料理とかが出てくると、さっぱり想像がつかないこともあるが、短い句でもよく理解できるものもある。時には目をとおして、遠き思い出の地、ブラジルをしのびたい」。
 坂本さんの句には特に力をいれて拝見したい、とあり、感謝の気持ちがよく表れている。
 三十四年前、伊豆野さんは、幼なじみの家で、アボガドをごちそうになった。タネが珍しかったので日本に持ち帰ったという。時を経て、いまでは、メキシコ産ではあるが、日本の店頭で手にはいる。輸入大国の日本では、世界各国の食べものが、さまざま輸入されている。そこで、伊豆野さんはブラジルに思いを馳せる。「ブラジルには、日本まで来ない食べものも多いでしょうね」。
 「伊豆野さんはそのうち、俳句づくりを始めるかもしれない」と、坂本さんは、一日午後、語った。そんな便りが来るのが楽しみだ。

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