ホーム | 日系社会ニュース | ■記者の目■ 片思いのブラジル

■記者の目■ 片思いのブラジル

ニッケイ新聞 2007年12月1日付け

 州内にある五千五百校、六百万人を対象にした教育プログラム「VIVA・JAPAO」を提唱した日野コーディネーターが企画段階で危惧したことは、「何故日本だけなんだ」という批判が出ることだったという。
 しかし、三月の正式発表以来、「そういう声は全くない」どころか、今までのプログラムと比較しても学校側の反響が大きく、もう一年延長する可能性が大きくなっているようだ。
 在聖総領事館関係者に聞くと、「公共教育の場でこれほど大規模に〃日本〃が取り上げられるのは、非常に稀」という。
 ブラジルほどの親日国は世界にも類を見ないだろう。今回の取材でも日本国歌を覚えて歌う教師、浴衣を着、慣れない正座でお茶を注ぐ生徒たちの姿を見てもよく分かる。
 これを受け、国際交流基金サンパウロ日本文化センターの西田和正所長は、「つぶさに日本を見てもらう機会に」と十人の生徒を日本に招待する企画を東京本部に提出した。
 おりしも、プログラム内で日本に関する作文コンテストがあり、「その優秀者を是非ー」と教育局も大いに乗り気になった。
 来年六月の百周年式典で優秀者を表彰後、日本で二週間ほど滞在、地元高校生などとの交流も図る。航空運賃は、ブラジル側企業の協力を得て、日本での滞在に関しては、基金がサポートするーというのが、大まかな内容だったようだ。
 しかし、航空運賃の協力が取り付けられなかったことから、企画自体が見送られた。「もったいないことだと思う」と残念がる西田所長は、「(VIVA・JAPAOが)継続されるようならば、条件を変え再度、企画を出したい」とも話す。
 代わりの賞品としては、十二台の「IPod」(携帯型音楽デジタルプレーヤー)が東京本部から送られてくるという。
 同プロジェクトの取材を重ねて感じるのは、知識や情報の少なさによるものだろう、中国などとの混同が見られることだ。
 この機会に将来のブラジルを担う子供たちに正しい日本の姿、文化を日本政府が在伯の関係機関を通して、伝えることはできないものだろうか。
 〃正しい日本ファン〃になった子供たちが成長した将来、様々な分野で活躍するだろう。経済関係の高まりが期待される両国において、その存在は非常に有益なのではないか。すなわち、日本の国利に繋がる投資といってもいい。
 日伯交流年を一カ月前に控え、各方面から「日伯交流の新しい時代」など、美辞麗句が並べられるが、空疎に聞こえてならない。
 予算など様々な事情はあるのだろう。しかし、これまでの日本側の対応は、「あまりにつれない」ように感じてならないのだが。        (剛)

image_print