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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2007年12月6日付け

 移民百周年(日伯交流年)開始まで、ついに一カ月を切った。サンパウロ市の百周年目玉事業はなにで、六月の式典以外の主要行事は何なのか、知っている人がどれだけいるか▼百周年記念協会は、秒読み段階ともいえる現在、主催事業の財源すら確保できていない。上原理事長らは先月に訪日したが進展があったとは聞かない。まさかこの差し迫った時期に、地球の反対側まで物見遊山に行ったわけではあるまい▼その一方で本日の日系社会面にあるように、観光省はパラナ州百周年の目玉事業テーマパーク「夢」構想に六億円もの資金を投入する決定をした▼同地の式典本番予算は、州内の二万五千日系世帯から三百万レアルを集めてまかなう方針だ。沼田信一さんら集金責任者三人は「家庭平均で三百レアルを」とのかけ声で、すでに同地連合会に加盟する約七十日系団体すべてをまわり、各代表者に募金を依頼した。八十九歳の長老は「楽ではないよ」と言いつつも「州全部八千キロは走った」▼「最初はどこの団体も、一家庭で三百レアルなんかムリだっていう。でも一時間、二時間と話し込むと『やっぱりそれぐらい必要だな』と納得してくれる。断ったところは一つもない」と胸を張る▼各地代表者が現在、移住地の一軒一軒をまわって浄財を集めている。だからこそ、当日の式典は尊いものになる。リーダー自らが頼みに来て頭を下げ、熱く語ったとき、百周年への募金を断る者がどれだけいるだろう。このような取り組みこそが、移民祭の原点ではないか。文協ビルの中でいくら会議を重ねても、移民からの共感も浄財も集まらない。(深)

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