ホーム | 連載 | 2008年 | アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から | アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(22)=動作緩慢、泳ぐ「なまけもの」=アマゾン河横断の記録も

アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(22)=動作緩慢、泳ぐ「なまけもの」=アマゾン河横断の記録も

ニッケイ新聞 2008年1月23日付け

◇獣の話(7)

貧歯類
〔タマンドゥアー・バンデイラ、続き〕
 面白いことに雨が嫌いで、パラパラ、ザーッと雨が降る音がすると、うずくまってしまう。それで森の中でいきなり出会うと、向こうも立ち上がって大手を拡げている。うっかりこれに突っかかると抱きしめられて、それこそ「死の抱擁」である。
 それで付近に落ちている木の枝や椰子の葉で、地面や下草を撫でてサラサラ、ザーッと擬音をたてると、雨だと思ってうずくまる。そこですかさず手ごろの木切で脳天をポカリとやる。矢でも鉄砲でも通らぬような頑丈な身体をしているくせに、ここが弱点らしく、それほど力を入れたとも思われぬのにストンとひっくり返る。しばらくすると、またもくもく動き始める。そこでもう一度ポカリとやると、またストンといく。朦朧としている間に急いで通り抜ける。
 いざ来いと仁王立ちなる 蟻喰ひの時雨に遭うてし ぼむ可笑しさ

 〔タマンドゥアー・ミリン〕
 タマンドゥアー・バンデイラより小さく、単にタマンドゥアー、あるいはマンビーラともいう。犬くらいの大きさで黄褐色。尾は房になっていない。普通に見かける種類である。
 農業者の大敵であるサウヴァ蟻やその他の蟻、白蟻などを食べてくれるので益獣である。木に登ることもできる。セアラー出身の者は、これを食べるというので試しにやってみた。ゴヤバの葉を入れて煮ると臭いが抜けるというので、そうやってみたが、臭いが強くてどうもいただけない。一口食っただけでうんざりして、側にいた犬にやってみたが、犬もちょっと臭いを嗅いだだけで「フン、こんなもの」とでも言いたげな顔をして横を向いてしまった。
〔タマンドゥアー・イー〕
 体長二十五センチくらいで黄褐色が多い。樹上に生活する。この剥製にしたものは福を招くといわれ、よく田舎の小店などに掛かっているのを見たことがある。

 貧歯類
〔樹懶〕(なまけもの)
 プレギッサといわれ、体長約六十センチ、淡褐色で、木の葉や芽を食用とする。好んでイムバウーバの葉や芽を食べる。動作はすこぶる緩慢で、そのためこの名がある。
 人のよいお婆さんのような顔をしている。動作は緩慢なくせによく泳ぐ。泳ぐといっても、毛が密生しているので、ポテンと水に落ちても、まるで何か毛の固まりが浮いている感じである。それでも手足をゆっくり動かしながら、なんとか思う方向に進んで行く。アマゾン河を横断したという記録もある。
〔犱徐〕(鎧鼠)
 タツーという。日本ではアルマジロといわれている。鎧のことをアルマドゥーラというから、それから来たのかもしれない。
 何種類かあり、大は体長八十センチくらいから小は二十センチくらいあり、ともに土中に穴を掘って群居する。植物、昆虫、腐敗した動物の死体などを食べる。それで墓穴の中でタツーを発見したり、マラリアで死に絶えた家を覗いてみると、タツーが何匹も寄って、死んで腐った人の肉を食っていた、との話が絶えず、人によっては絶対にタツーを食べない。種類にもよるが、タツー・ガリンニャといわれる種類は美味である。
 驚くべき速度で穴を掘る。そのため、ブラジル人は地下鉄工事用のトンネル掘り機に「タツーゾン」(ゾンは巨大の意)の綽名を進呈した。つづく (坂口成夫、アレンケール在住)

image_print

こちらの記事もどうぞ