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アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(4)=スルククー(蛇)は〃強壮剤〃=あっさり捕らえ窯で焼き保存

2007年9月5日付け

 

 ◇蛇の話(1)
 アマゾンといえば、猛獣毒蛇が跋扈(ばっこ)して、魑魅魍魎(ちみもうりょう)が横行する暗黒大陸ということになっている。そういう所もたまにはあるが、大抵はまずこれがジャングルかと驚くほど明るい。昼なお暗きなどという所は、蔓性の植物が大繁茂して、木々の上を覆い、陽光を通さないほどびっしり繁っている所だ。そう沢山はない。
 魑魅魍魎は措くとして、猛獣毒蛇だが、猛獣は第一に指を折るのは、オンサである。アメリカ・ライオンという。これは、別の話に譲るとして、ほかに危険な動物(人を襲ってくるような)は、余り見当たらない。
 次に蛇だが、有毒や無毒の蛇がごまんといる。一九五三年、小生が入った所は、アレンケールの少し上流の東京都出身の佐脇忠氏の所であるが、この家が近所より小高い所に建ててあった。雨季になって浸水すると、蛇は追いたてられて、高い所、高い所へと移動する。
 そして、佐脇さんの家の下に集まって来る。それが水が増えるにつれて、上へ上へと昇り、家の中に侵入する。靴を靴箱から出すと変に重い。逆さにしてポンと叩くと、ストンと蛇が落ちて来る。太くて短くて動きが鈍く、頭はすごい三角形である。極め付きの毒蛇で、スルククーという。
 すかさず靴でぱっと叩くと、身体をくねらせている。そこで頭を抑え付けて捕まえる。炊事場へ持って行って、首をちょん切って火の中へ。これを変な所に放っておくと、その頭を踏んづけて毒にやられるので、必ず火の中にくべる。頸(くび)のところで皮をめくって、ひっぱると、するりと剥ける。肛門でちょっと引っかかるが、また一引きすると、きれいに剥けてしまう。内臓を取って、少し塩をして窯へ。こんがり焼けたら、冷やして缶のなかへ。この手で四、五十匹捕らえ、みな缶へ入れてしまった。これを一、二寸(三~六センチ)ずつ食べるとたいへん元気が出るので、重宝した。
 奥地に住んでいたとき、日本人が一家族働いていたが、その家の親父さんが大分くたびれた風をしていたので、蛇の丸焼きを進呈して、一、二寸食べるよう、よく説明してやった。
 明くる朝、親父さんが随分汐垂(しおた)れた様子をしていたので、「どうしたのですか。蛇は食べたのですか」と訊くと、「どうもこうもない。沢山食えば元気になると思って、一匹全部食ってしまったのです。すると、ムスコがいきなり張り切りだして、カンカンカチカチ、いくらカミさんでもそう何回も相手にしてくれるはずもなく、イキリ立ったムスコを抱えて、残りの夜を一睡もしなかったのです」と、しょぼくれた眼をして答える。気の毒やら可笑しいやら、よじれる腹をかかえて飛び出してしまった。
 小学生のときから、蛇を見つけると、捕らえてポケットに入れて持って歩いて、授業中にそっと放して皆が大騒ぎして逃げ出すのをニヤニヤしてみていた。隣の町のガキ大将にでっかい奴を放りつけて悲鳴をあげさせたりした。幼年学校のときは、ヤマカガシをバケツの中に入れて、毎日蛙をやって飼っていた。時々電灯線を引っ張る紐などにのっけて「東西東西」などとやりながら、紐の上を渡らせたりしたもので、蛇に対して変な恐怖心など無かった。猛毒だろうと何だろうと、いとも簡単に片付けている。つづく (坂口成夫、アレンケール在住)



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