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アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(19)=カザメント・デ・ラポーザ=ここにもこの言葉「狐の嫁入り」

ニッケイ新聞 2008年1月5日付け

 ◇獣の話(4)
 食肉獣(猪科)
〔マラカジャー・アッスー〕
 ジャグワチリカともいう。体長七十~八十センチ。尾は四十五センチくらい。斑紋はオンサに似ていて、それよりさらに美麗である。皮は高価に取引される。
〔マラカジャー・ミリン〕
 マラカジャー・アッスーより更に小型で、尾も短い。毛皮もマラカジャー・アッスーよりずっと安く取引される。
 〔ガット・モウリスコ〕
 プレト(黒)とヴェルメーリョ(赤)とあり、山猫である。家猫より少し大きい。よく人に馴れる。
 
 食肉類(犬科)
〔ラポーザ〕
 狐の意である。黒褐色、脇部は黄色。よく放し飼いにしている鶏を襲う。卵を取ったり、雛を食べたりする農家の敵である。面白いことに日照り雨のことをカザメント・デ・ラポーザ(狐の嫁入り)という。日本と同じである。
 〔グワシュニン〕
 黄灰色の毛色で、浣熊(あらいぐま)ともいう。水に近い所に棲み、なんでも洗って食べるため、その名がある。何でも開けてみる癖があるので、落とし桟を掛けて閉めたはずの戸が開いていたり、蓋をしたはずの缶が開いて、中の食物が散らかっていたりするのは、この悪戯者のせいである。
 〔コアチー〕
 家猫の大きさで茶褐色。狸の顔に似ている。鼻先がよく動き、これをヒクヒクさせながら食物を探す。尾は長く灰色と黒色のダンダラ模様。群棲する。
 これを撃って面白いことがあった。
 樹に逃げしコアチー撃てば忽ちに一家眷属雨と振り来る
 樹に逃げ上がったコアチーにズドンと一発お見舞いしたら、忽ちドスドスドシンと十何匹かのコアチーが雨と降ってきた。アッと驚いて、どれを撃とうかとウロウロしているうちに、テンデの方向に、スルスルと繁みの中に入り込んでしまい、フッと気がついたときには、皆消えうせてしまった。実にみごとな韜晦作戦。獣ながら天晴れというほかはない。
 これのイチモツを乾かし固め、少しずつ削って飲めば、催春の効ありという。インジオの中にはこれを用いる者もあるが、効き目の方は定かでない。
 〔イラーラ〕
 鼬(いたち)に似てもっと大きい。黒色。体長五十センチ。尾が五十センチくらいである。ときどき抱卵中の卵を盗みにくる。敏捷でよく木に登る。
 〔アリラーニャ〕
 獺(かわうそ)のことである。アリラーニャとロントラがあり、前者は黒褐色、後者はもっと色が薄い。毛は短く美麗で、毛皮を取るため追及される。体長八十センチから九十センチ。尾は扁平で五十~六十センチあり、アマゾニアの小河流中に見られる。
 〔ヂュパラー〕
 日本ではキンカヂューといわれる。家猫の大きなものくらいで、熊科に属する。大きさの割に力が非常に強い。夜行性で雑食である。つづく(坂口成夫、アレンケール在住)



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