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アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(14)=聖週間の時期〃神が与える〃=魚の大群「捕らえよ」と

ニッケイ新聞 2007年11月28日付け

 ◇魚の話(7)
 〔ペスカーダ〕
 海のものと河のものとがあるが、ともに中型の魚で、漁獲量が多いので、食糧として重用される。やはり傷み易いのが欠点で、最近は冷凍してある。
 〔クリマタ〕
 例年二~三月になると、キリスト教でセマーナ・サンタ(聖週間)、肉を食べない。そのため魚を多く用いるが、その時期に産卵のため群れをなして川を遡る。この現象をピラセマというが、そのため捕らえるのが容易である。セマーナ・サンタと結びつけて、造化の神が肉を食べない代わりにこれを食え、とお与えになったものと神に感謝する。ピラセマは所によっても異なるが、魚の大群が急流や滝を次々と跳ね上がって遡っていくのは、まさに壮観である。この魚の卵の塩辛は、鱈子に似ていて、美味である。
 少し古くなったのは、公衆便所の臭いがしていただけない。新しいうちに焼いて身をほぐし、さらに炒ったものはピラクイといい、アカリーのものと同様に用いる。アカリーのピラクイは品質がよい。しかも保存に堪える。
 〔アラワナ〕
 日本でアロアナと紹介されたことがある。ピラルクーをうんと小型にし、もっと縦に平べったくしたような魚で、古代魚である。体長五十~八十センチくらい、水面近くを遊泳している。
 舌もピラルクー同様骨質で、口蓋も固く釣針がたたない。これを釣るには、ジュートの殻を浮子にする。これに十センチほどの糸に釣針、餌をつけ、アラワナの通るところに放り込む。そのうちに浮子が引きずられ始める。こちらと反対側の方向に引っ張り始めるのを待って、グイとひと引きしてから、寸時もたゆまずに糸を手繰り寄せる。
 最後は一気に家の中やカノアの中に放り込む。ちょっとでも糸を緩めると、釣針は単にひっかかっただけなので、すぐに離れてしまう。やり損じても、少し時間が経ってから同じところで同じようにして釣る。この魚は少しバカなのか、どうか知らないが、何回か同じことをやって、最後には釣り上げられてしまう。投網や刺網でも捕らえる。
 〔サルジニア〕
 鰯と訳されているが、全然異なる。五センチくらいから十五センチくらいになる。朝、八~九時頃、蜂の子やマンジオカ粉を練って団子にしたものなどを餌にして釣る。うまくいくと、小一時間に百匹以上釣れることも稀ではない。女子供たちがワイワイいって楽しんでいる。でもこの時間は男どもはみんな仕事で、釣りどころではない。それにこの時間をはずすとピタリ釣れなくなるので、妙である。
 サルジニアのから揚げ、しかも一回冷えてからまた揚げたのは頭から尻尾までガリガリ食べられるので、カルシウムの補給に大切である。インジオたちはこれを釣りの餌にする。似たのにピアバがいるが、これは主に陸地の小川で釣れる。
 〔鯰〕
 ペイシ・リーズと総称される。スルビン、ドウラード、ピラララ、ジャウー、マンジー、マパラなど種類も極めて多い。概して夜行性で、よく夜釣れる。
 全種類を通じ、腫れ物、傷、インキン、タムシなどがある人がこれを食えば、たちまち悪化する。普通に調理してよく、またすり身にして、かまぼこやさつま揚げになる。マパラの蒲焼は脂が多く、うなぎの蒲焼に似ているので郷愁を癒すのにも使われる。
 マンジーは、十~十五センチの小さい鯰であるが、行動敏捷、棘を持っていて、油断するとこれにやられて痛い目をみる。
 ピライバは、アマゾン産の魚の中、最大といわれ、ときどきこれに人が呑まれたという話があるが、実物を見たことはない。これの仔をフィリョチというが、それでも七十~八十センチある。つづく (坂口成夫、アレンケール在住)



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