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アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(17)=ケイシャーダ性質凶暴=遠雷にも地鳴りにも似る

ニッケイ新聞 2007年12月19日付け

◇獣の話(2)
 哺乳類 猿類
 〔コアター〕
 蜘蛛猿。体長九十センチくらいで、アマゾニアの猿類中最大である。色は黒色で、四肢と胴体は細長い。群棲し、よく人に馴れる。肉は美味である。
 〔モン・アマレーロ〕
 黄色い手の意味で小型、体長十~十五センチ、尾が二十センチくらいある。顔は、鼻が黒くて、眼や口の周りは白色である。背は薄茶色、四肢は黄色である。そのためこの名がある。
 家でも飼ったことがあるが、砂糖壺の蓋を取って中の砂糖の塊を掴んで逃げたり、菓子を持っている子供の手に軽く喰いついて、子供がびっくりして菓子を離したすきにさらって逃げたり、お客さんの頭に乗って虱(しらみ)を取るふりをしているので、安心していると、小便を垂れかけて逃げたり、悪戯も一入である。
 ただ、これを飼っていると、ゴキブリや蜘蛛などを片っ端から捕らえて食ってくれるので、助かることもある。
 〔サウイン〕
 絹猿またはミコともいう。南米特産の鈎爪を持つ。小型の猿で種類も多い。一般のは黒色であるが、中には金色の長い毛を持つミコ・レオン・ドラード(レオンはライオン、ドラードは金色)など絶滅が心配され、一回日本に輸出されたものの、また返還されたものもある。賞翫用に飼われる。
 奇蹄類(厚鼻類)
 〔アンタ〕
 獏である。日本では夢を食う霊獣といわれる。象と河馬と豚との間の子みたいな動物で、体長二メートル、体高一メートルに達する。皮は厚く強靭で、種々の用途に供される。肉は馬肉に酷似している。煮ると薄黒くなるのも同様である。これの塩干ししたものを焼いたのは、最も美味である。糞も馬糞に似ている。コロコロしたのも同様である。
 仔は、暗褐色の地に鹿の子模様の斑紋や斑条があり、鹿の仔に色だけは似ている。水辺を好み、よく泳ぐ。陸上では、到底人間やほかの動物の入れぬびっしりと詰まった藪や茨の中に棲み、危険な動物(オンサ)から身を守る。

 不反芻類(野猪科)
 野猪である。ポルコ・ド・マット(森の豚の意)ともいわれる。
 ケイシャーダは、体長一・一メートル、体高五十センチくらい、灰褐色ないし黒色である。群棲する。それも百頭以上のことが多く、性質凶暴である。奥地に住んでいたとき、何回かこの群れが近くを通ったことがあり、その中の一回は近くの部落を通り抜けて行った。この群れが通るときは、随分遠くからその音が聞こえるのである。その模様を、未熟ながら歌につくってみた。
 遠雷にも地鳴りにも似て刻々と尚迫り来るケイシャーダの群
興奮に手を震はせて先込の銃に弾丸込めせはしく語る
パーリャ壁を貫き通るケイシャーダに机に乗りて抱き合ふ母子
転がりし鍋に伏さりて捕はれしケイシャーダの仔の眸は哀し
「子連れは撃つな」「種を残せ」と呼び交し撃滅戦の囲ひ縮むる
土煙・硝煙・血風・戦場を思はす累々と地を覆ふ屍
どの家にも四、五枚宛の皮干して神の恵みと笑顔明るし
 カエテトゥーはもう少し小型で体長九十センチ、体高四十五センチくらい、毛色は暗灰色で肩から胸にかけて、月の輪型の白い斑点がある。二~三頭から七~八頭の小さいグループで行動する。
 二種ともにその肉は美味である。中には仔のときに生け捕って飼っているものもあり、よく人に馴れる。それでも時たま人に噛み付くことがある。
 ほかにもう一つジャワリーといって、牙が大きく、猪にあたるのがいるそうだが、私はまだ見たことがない。つづく (坂口成夫、アレンケール在住)



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