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アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(29)=昆虫に対する知識は不可欠=一朝で収穫や命を失う恐れ

ニッケイ新聞 2008年3月4日付け

 ◇昆虫の話(1)
 鞘翅類、直翅類、脈翅類、膜翅類、鱗翅類、双翅類、多足類、蜘蛛類と種類も数量も非常に多い。そしてこれらに対する知識を欠いていると、ひどい目に遭う。オンサなどの猛獣よりも、たかが虫と侮るなかれ、一年間粒粒辛苦の農作物を一朝に失ったり、マラリアや熱帯潰瘍、デング熱などであたら一命を失ったりする。順を追って主なものを拾っていく。

鞘翅類(ベゾーロと一括して呼ばれる)
 かぶと虫。大小種々あり、二センチそこそこのものから十五センチ以上になる大物もある。かみきり虫も大小種々あるが、中で面白いのはセーラ・パウ。セーラは鋸(のこぎり)を引く。パウは木、木を切るものという意であるが、枝を輪状に齧っていって切り落とすときに、いつも切り落とされる側にいて、枝ととともにストンと落ちるのもおかしなものである。尤も、切り落とした枝に卵を産み付けるので、そのためかもしれない。
 大小の穀象虫。穀類を食い荒らすので、穀物の貯蔵にはこの駆除が肝要である。総じて、ゴルグーリョと呼ばれる。
 テントウムシも大小あり、中には害虫を駆除する有益なものもある。

ホタル(蛍)
 蛍は、日本のは腹部の末端から蛍光を発するが、ここのは、その外に眼のほうが光る。赤く、また緑黄色に光る。三、四センチに達する大きなものもある。日本人はこれをサカサボタルと呼ぶ。

 直翅類
 代表はバッタ。ガファニョットと呼ばれる。これが天候異変などの気象条件により、異常発生することがよくある。天日なお暗しというほどの大群が空を覆って襲来することがある。これにやられると、牧場も畑もたちまちのうちに丸坊主と化し、その損害は計り知れないものがある。
 飛行機による殺虫剤散布をしても手遅れで、薬を撒いた時はすでに丸坊主になっていたということが多い。泥棒に追い銭である。尤も、このために他への拡散をふせぐことはできる。

グリロ(蟋蟀=こおろぎ)
 少ない時は余り目立たないが、多いと着物を食い破ったりする。

紙魚(しみ)
 書籍や記録の古いものを荒らすのは、日本も同様である。

蟷螂(かまきり)
 日本と同様であり、益虫である。

カメムシ
 クサガメに似ているのにペルセベージョがある。農作物や果樹に害を及ぼす。
 サシガメに似ているのに、バルベイロがある。体長二、三センチで、主に土壁や椰子壁の隙間に好んで棲む。夜這い出して血を吸うことは、南京虫と同様であるが、これはシャーガス病というのを媒介するので、危険である。中、南米に普遍であって、これに噛まれても痛みを感じないので、何匹にも噛まれながら眠っているようなことが多い。
 急性の場合は、悪寒、発熱(四十度くらいになる)頭痛が四、五日から一週間くらい続き、熱が下がると、慢性病症になる。悪性の場合は高熱、全身麻痺、嘔吐、下痢をともない、全身に浮腫ができる。慢性になると、甲状腺が腫れて大きくなり、大きな瘤ができる。脈が早くなり、血圧が低下、体がだるくて仕事にならない。頭にくると、動きや頭脳の働きも鈍くなり、魯鈍となる。
 子供の場合は、発育不良を起し、馬鹿みたいになってしまう。その治療法は、今のところない。唯一の方法は予防にある。土壁、椰子壁、古くなった木造建築物に住まぬことである。やむを得ず住む場合は、硫黄かフォルマリン燻蒸をおこなうべきである。つづく (坂口成夫、アレンケール在住)



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