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アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(20)=狩猟で得られる肉の中で最高=パッカ、胆汁は血清のよう

ニッケイ新聞 2008年1月9日付け

◇獣の話(5)
齧歯類
〔カピバラ〕
 グヮラニー語でカーピあるいはカピンは草。バラは主とも訳すべきで、「草の主」ということになる。齧歯類中世界最大で、体長一メートル、体重五十キロ以上、体高六十センチ、色は赤褐色~灰褐色、頭が大きい。尾はない。
 趾間に半分蹼(みずかき)を持っている。よく泳ぎ、よく潜る。小群をなして水辺に棲み、草食である。それでも、水辺に近く耕地があると、玉蜀黍や豆を荒らす。
 肉は美味で、脂油も薬用に供され、その繁殖力が旺盛なことと、耕地にもならぬ沼沢地を利用して飼育しようという動きが最近みられる。よく人に馴れ、子供と一緒に水浴びなどして、ピラニャから子供を守る役もする。
〔パッカ〕
 体長六十~七十センチ、耳は小さく、尾はない。灰褐色で側腹に白斑または黒條がある。低地を好んで棲み、果実、木の根を食する。その肉はたいへん美味で、しかも柔らかく、ほかの獣類みたいにけもの臭くない。狩猟で得られる肉の中で最高である。
 木の根の下に穴を掘って棲んでいる。胆汁は刺さった棘が肉の中に入り込んで抜けないときに吸出しに用いる。なお、毒蛇の咬傷に対して内服および外用する。
 これは多分低地を好んで好んで棲み、みみずや木の根をあさっていて、蛇や蝎(さそり)や百足(むかで)、毒蜘蛛(どくぐも)、蜂などにやられる機会が多く、そのために自然に体内に抵抗力ができ、肝臓の毒に対する抑止力が強まって、それが胆汁の中に濃縮されていて、ちょうど血清のような作用をするのではないかと思われる。ほかにもいろいろな病気に使われる、日本の熊の胆みたいなものである。
〔クチーア〕
 体長五十センチくらい、大きな猫くらい、後肢は前肢よりはるかに長く、兎を思わせる。耳は小さく丸く、尾はない。ただし、よくみると、あるべきものがチョコンとある。毛色は赭色である。アマゾン河の南岸には黒褐色のや灰色のがいるそうだが、見たことはない。
 最も一般的な狩猟の対象物で、落ちている木の実やその食べ散らかし具合から、まだ食べに来ると見当をつけて、その近くの木の上に棚を作って待撃する。肉は上等である。
〔クチアラ〕
 クチーアに似てずっと小型。大きな鼠くらいである。小さい尾がある。肉はクチーアより少し上等である。
〔コアンドゥー〕
 ポルコ・エスピーニョ(ポルコは豚、エスピーニョは棘)で、ヤマアラシのことである。体長六十センチ、尾は物を握ることができる。怒ったり、驚いたりしたときは、急にパツと毛を、いや棘を逆立てて、ブルブルッと震わすと、時には棘が飛んできたりする。棘の生えた木の藪の中などに眠っていて、夜、果実を漁る。
 肉は美味だそうだが、食べたことはない。一体、あんな棘だらけの奴をどうして料理するんだ、と訊くと、始めに水をぶっかけて火にあぶる。また水をぶっかけて火にあぶる。そうしてこさぐと、棘はみな落ちてしまう。あとは普通の獣と同様にすればいいという。
〔コアチプルー〕
 何種類かあるが、栗鼠である。動きの敏捷なこと、小鳥を捕るパチンコなどでやっても、石が当る前にクルリと枝の反対側に廻って躱(かわ)してしまう。つづく (坂口成夫、アレンケール在住)



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