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「百年の知恵」=日系人とバイリンガル=多言語と人格形成の関係を探る=□第1部□日系社会の場合(2)=「三つ子の魂、百までも」=幼少移住の方が訛り少ない

ニッケイ新聞 2008年3月20日付け

 上智大学の坂本光代准教授はバイリンガルセミナーの中で、「同じニュースでもCNN(米国のニュース専門TV)とNHKでは違う観点から報じている。バイリンガルは両方の視点を享受できる」と複眼思考の利点を強調した。
 複数の目線でものごとを観察できるようになると、同じ出来事を目撃しても、モノリンガルの人より、より深い洞察が可能になるという可能性を示している。
 さしずめブラジルにおいて日系子弟がバイリンガル話者になることは、例えてみればCNN(欧米)、グローボ(南米)、NHK(アジア)という三眼思考を持つ人材といえそうだ。
 今でこそ、バイリンガルは脚光を浴びる能力として若者たちがこぞって語学学校へ通うご時世になったが、一九七〇年代前半まで、伯国でも二言語習得は「弊害こそあれ良くない」という意見が強かった。「どちらも中途半端になる危険性がある」という指摘だ。
 ところが七〇年代後半ごろには言語学の研究が進んだことにより、むしろ「認知学的・言語学的に有利」という現在一般的になっている見解が広まってきた。
 ただし、両語ともに中途半端になる危険性がないわけではない。教育者や親が言語や教育学に関する基本的な知識をもって、注意深く取り組むことが肝要だ。
 現実には、日本移民はそのような専門知識なしに体当たりで、「国語教育」とか「日本語教育」と考えながら、バイリンガル教育に取り組み、多くの両語話者を生み出してきた。
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 「外国語を訛りなくしゃべるのは、外国にどれだけ長く住んでいるかとは関係なく、どれだけ幼くしてその国に移住してきたかと関係する」との同准教授の話を聞き、納得した。
 発音の訛りに関しては、聞く能力に関する脳神経が四~五歳で確立すると言われていることに関係するようだ。母語話者なみの発音をするには、幼児期からその言葉に日常的に耳慣れしていないと難しい。その時期を過ぎて学習しはじめても、すでに脳神経の柔軟さが失われており同じようには習得できないという。
 「鉄は熱いうちに打て」とか「三つ子の魂、百までも」ということわざがあるが、幼年期に親からしつけられた習慣(食習慣も含めて)や、幼少時の言語環境は子供の一生を決定付ける。
 「目の前の相手があまりに流ちょうにポ語をしゃべるので、てっきり二世かと思っていたら準二世(子供移民)だった」という経験のある人は多い。
 逆に、二十歳過ぎてから移住した場合だと、伯国の大学を卒業したような人でも発音には訛りが残る。
 いくら発音が良くても、それはコミュニケーション能力の一端にすぎない。交渉能力や発言内容など、経験や知的レベルが伴わなくては意味がない。その意味で、二十歳を過ぎてから習い始めた人も十分にコミュニケーション能力を持つことが出来る。
 ここでいうバイリンガルとは、「二つ以上の言葉を使って、会話や文書などで意思の疎通ができる人」という意味で使っている。両語とも読み書きまで母語話者と同程度にできる人は理想型だが、現実には非常に少ない。
 母語の方は読み書きが完全だが、第二外国語の方は会話による意思の疎通ができる程度でも「バイリンガル」と考えている。
 坂本准教授の発表した言語習得の二段階について、次回では伯国に当てはめながら説明してみたい。
(つづく、深沢正雪記者)



「百年の知恵」=日系人とバイリンガル=多言語と人格形成の関係を探る=□第1部□日系社会の場合(1)

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