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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年3月25日付け

 中国のチベットで動乱が起き大きな問題になっている。首都ラサのポタラ宮はラマ教の盛大さを物語るものであり、06年には5000米の高地を走る「青蔵鉄道」が敷設され話題になったけれども、漢民族によるチベット族抑圧は今も続く。この弾圧は歴代の王朝もだし、共産党政権による虐待も激しい▼ダライ・ラマ14世がインドに亡命した1959年のラマ暴動はよく知られるが、天安門事件があった1989年にも騒乱があり、20万人の犠牲者がいたの記録もある。このときに指揮をとったのが、チベット自治区党委書記だった国家主席の胡錦涛氏なのは有名な話であり、世界の国々が中国の人権批判に厳しいのにも、こうした背景があるのを忘れまい▼この騒ぎで武装警官は無差別発砲をしたの報道もあり、事態を重く見たフランスは近く開かれるEU外相会議に「北京五輪の開会式には欠席する」の決議案を提出することを決めたし、アメリカも厳しい態度を崩していない。大統領候補のオバマ氏とヒラリ―さんや共和党のマケイン上議も「中国当局による暴力的弾圧」を強く非難し、国民も同調している▼中国政府は「我が国に民族問題は存在しない」と公言しているが、ウイグルを始めいろんなところで差別や虐待があるのは、多くの人が知っている。チベットも同じであり、漢人には大きな反発があるし、心の内には「独立」の願いが雄雄しく生きている。胡主席らは、穏便に解決をしたいと願っているだろうけれども、これまでのような武力による制圧に頼るならば傷穴を深くし、深刻な混迷を招き人権非難はさらに高まる。(遯)

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