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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年3月27日付け

 十四日付け英国ガーディアン紙は堂々二十頁ものブラジル特集を組み、「〃未来の大国〃の〃未来〃はまだ到来していないが、大分その時が近づいた」と経済の堅調ぶりを讃えた。先進国なみ地域とアフリカなみのそれが共存している様を〃コントラストの国〃と位置づけ、偶然に経済好機期に就任したとの観点から「ルーラ大統領は偶発的なヒーローか」と呼んだ▼と思えば、その翌週二十一日付けエスタード紙ネット版には、「ブラジルは国際的カジノの犠牲になろうとしている」と警告する記事も。好調だと過信していると、とんでもない罠が待ち受けているという▼国連貿易開発会議(UNCTAD)の主任エコノミスト、ハイネル・フラスベック氏をインタビューしたその記事は、「レアルが高騰しているのは、ブラジル経済の好調さだけが原因ではなく、実は高金利につられた外資の投機的な流入によるものだ」と分析する▼国際的な投機筋は、日本で事実上のゼロ金利で手に入れた莫大な資金をブラジルに持ち込み、高金利で運用して利ざやを稼いでいる。「今のままドルが下落し、レアルが高騰し続ければ九〇年代の二の舞になる」とまで▼グローバル時代の日伯関係は、意外なところでつながっていると感じさせられる記事だった。万が一、そのシナリオが現実になれば在伯日本人や日本企業は二重に被害を受ける。処方箋は、ブラジル政府が外貨準備高を蓄え、いざという時に備えることだという▼米州開発銀行によれば、デカセギは〇六年だけで三千億円を日本から送金した。継続的かつ投機的でない外貨を送るその存在は、多少はブラジル経済安定に寄与しているのかもしれない。(深)

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