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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年5月7日付け

 沖縄県内の演劇グループによる演劇「イッパチの夢に賭ける」が近くブラジルでも上演される。「演劇で里帰りする」と評判で、すでに先月二十六日、名護市民会館で壮行公演が行なわれた▼イッパチはあだ名で本名は儀保蒲太、南風原町生まれ、十二歳で渡伯した笠戸丸移民である。三十九歳で死去するまで、二十七年間、主としてサンパウロで賭博師として生きた▼原作者は、ブラジル初期移民の苦難の歴史と当時の人々の思いを表現したい、と意欲的だ。イッパチと同じく一九一〇年~二〇年代に生きた初期移民は、今や極めて少数であり、当時幼少、現在高齢であることから、その思いといったものを〃証言〃してもらうのは難しい▼したがって、現在の人は「想像」をするしかない。沖縄在住者はもちろん、ブラジルにいる人も、である。だから、この演劇は興味深い。イッパチその人、あるいは同時代に生きた移民の思いは、どうであったのか、それをどう考証し、どう迫っているか、面白さはその一点にあるといってもいい▼イッパチは農業はしなかったらしい。博打で当てて、富を得、錦衣帰郷することに人生を賭けていた。一方、同年の同航者金城山戸は、堅実に人生を歩み、ブラジルで最初の歯科医となった。演劇では二人の友情や対照的な生き方も描かれるという▼日本の日本人がブラジルと移民に着目し、演劇化するというのは珍しい。イッパチの特異さは劇化しやすかったのであろうが、さて、その出来栄えは?。(神)

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