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「植林はおまかせ下さい」=パラグアイ、イグアスー移住地で=〃新生〃自然環境保護委が始動

ニッケイ新聞 2008年7月17日付け

 【既報関連、イグアスー発】ブラジル国境の町、フォス・ド・イグアスーから友情の橋を渡り、アスンシオンに向けて国際道路を走ると四十一キロでイグアスー移住地の中心部にたどり着く。パラグアイを代表する大豆生産地の一つとして知られているこの移住地は、一六六一年に入植が始まり、今では約七万一千ヘクタールの肥沃な大地が広がっている。
 ここの日本人会(公文義雄会長、高知県出身)が日本経団連自然保護基金の助成を受けて、二〇〇六年から植林活動を積極的に展開している。〝美しい森づくり〟運動だ。すでに十余の森が誕生している。これらの活動を総合的に調整するため、〇六年十二月に日本人会の中に自然環境保護委員会が設立された。
 活動の多様化に対応できるよう、この機能をさらに強化するために今年の六月に竹内一郎さん(高知県)を委員長とする新体制が発足した。竹内さんは第一次委員会にも名を連ねて環境保護や植林に取り組んできたベテランだ。
 委員には、(敬称略、順不同)、池田貴幸(福岡県)、関明節(二世、ラ・コルメナ)、工藤敏男(岩手県)、農協推薦の高田和仁(二世、兵庫県)と西岡賢二(二世、長崎県)、そして、事務局を担当する澤村壱番(高知県)、という布陣だ。日本人会と農協が連携して環境保護に力を注ぐ移住地の意気込みが委員構成に反映されている。
 今月初旬、北海道の洞爺湖畔で開催された先進国首脳会議で地球温暖化を含めた環境問題が主要議題の一つとなったが、一人の人間が呼吸によって空気中に吐き出す二酸化炭素(CO2)の量は三百二十キログラムといわれている。これを相殺するには三十二本の木が必要だ(NHK、六月八日放映)。
 ところが、現実には、ブラジルでもパラグアイでも、東南アジアのインドネシアでも、不法伐採を含めた行為により、森林面積の減少が急速に進んでいる。世界の人口は増える一方だ。このまま推移すれば、〃母なる地球〃でさえ自力で手に負えなくなり、次世代が地球規模で窒息死を余儀なくされる事態を迎えることは避けられまい。
 そうなると、今の世代がとりかえしのつかない〃負〃の遺産を残すことになる。私たちが地球温暖化ガスとCO2削減に貢献できる最も基本的な行動が「木を植えること」にたどり着く。自分自身のため、家族のため、子供のため、そして、地域社会のため、植林は欠かせない。
 かといって、植えられた若木が自力で健全に育つ保障はない。南米大陸の多くの地域では、初期の三年間前後は雑草やアリなどから若木を守らなければならない。水を補給することが必要な時もある。イグアス自然環境保護委員会のような役割が欠かせない。
 地球規模を視野に足元で行動する(think globally, act locally) を実践しているのがこの委員会だ、と言っても過言ではない。サンパウロ在住の沖真一さん(東京農大OB)の側面支援も大きい。沖さんは十年も前から折にふれて移住地を訪問しており、地域の植生に詳しい。

イグアスー湖周囲の=保護植林も視野に

 イグアスー移住地の一部、約一万七千ヘクタールに、通称「イグアスー湖」とよばれている、日本最大の琵琶湖の九〇%、湖面面積六百四十平方キロメートル、の大きな人造湖がある。この水を利用した水力発電所が約二百四十億円に及ぶ日本の有償援助で建設されることが決まっている。湖岸と流域保護のためには植林が欠かせない。かなりの大規模となることは明瞭だ。
 〝美しい森づくり〟の成果に注目したパラグアイ電力供給公社が、イグアスー日本人会に保護植林への参加を要請してきている。同日本人会直営の育苗センターには、約十万本の苗木が育っているが、新しい需要に割く余裕がないため、施設を拡充してより多くの苗木を育てる必要性に迫られている。しかも、急務だ。
 イグアスー自然環境保護委員会の役割は重要性を増す一方だ。百の議論よりも一の行動の重要性をイグアスー・イニシアチブは示唆している。「近隣諸国や日本からぜひ植林に来てほしい」と竹内一郎委員長は悲鳴に近い本音を吐いている。

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