ホーム | 日系社会ニュース | 夏の甲子園=母に捧げたホームラン=本庄一高=奥田ペドロ選手がサヨナラ打=通算15人目、日系人で初=涙ぐむ母ローザさん

夏の甲子園=母に捧げたホームラン=本庄一高=奥田ペドロ選手がサヨナラ打=通算15人目、日系人で初=涙ぐむ母ローザさん

ニッケイ新聞 2008年8月6日付け

 現在開催中の第九十回全国高校野球選手権大会で、二人のブラジル人留学生を擁する本庄第一高校(北埼玉)が開星高校(島根)をサヨナラホームランで破り、甲子園初勝利を決めた。夏の大会史上十五人目、日系ブラジル人としても初めてとなるサヨナラ打を放ったのは、留学二年目の奥田ペドロ選手(三世、マリリア出身)。「バッチしてくれたの」――。劇的なホームランでチームを勝利に導いたペドロ選手の母親で、マリリアに住むローザさん(54、二世)は涙声になりながら喜びを語った。
 日本の各メディアの報道によると、四―四の同点で迎えた九回裏。先頭打者のペドロ選手は、三球目に来た真ん中低めのスライダーを力一杯振りぬき、打球はバックスクリーンに飛び込んだ。夏の大会では史上十五人目、日系ブラジル人としては初めてとなるのサヨナラホームランの快挙を成し遂げ、甲子園初勝利を達成した。
 ペドロ選手からは、試合の前日に電話があったという。ローザさんはニッケイ新聞の取材に、「『お母さんのためにバッチするよ』って言ってくれたの」と嬉しそうに話してくれた。
 ローザさんはインターネットで試合の結果を調べ、勝利を確認したという。「試合が終わって電話して、ペドロと話しました。前に言っていたように、バッチしてくれた。サヨナラホームランをバッチしてくれたの。良いですね。嬉しいですね」と涙声になりながら喜びを表した。
 現在は病気のため療養しているローザさん。「病気になったけど、今は元気になりました。(これからも)しっかり頑張ってほしいですね」と日本の息子にエールを送った。
 ペドロ選手は、祖父に野球を教わり、十二歳の時にヤクルトアカデミーに入った。ジュニアのブラジル代表にも選ばれている。
 須長三郎同校監督の縁により二〇〇七年同校に入学。昨年は、一年生ながら主軸で遊撃手を務め、地方大会準優勝に貢献した。今年も地方大会から主軸を任され、春夏通じての甲子園初出場の大きな原動力になった。
 ブラジル野球連盟の沢里オリビオ副会長は「子供の頃から彼は上手かった」と当時を振り返る。「野手(の留学生)はあまり日本に行かない中で、よく頑張っている。ベスト八まで入って、選抜されてブラジルに来て欲しいね」と期待を込めて話した。
 また、同チームには、ペドロ選手と幼馴染で一緒に訪日した伊藤ディエゴ投手(二年、マリリア)もエースとして活躍している。今回の試合での登板機会はなかった。
 二回戦の相手となるのは、青森大会を五連覇し、大会四日目第二試合に登場した青森山田高校。同校にも日系ブラジル人の曲尾マイケ選手(二年)が在籍している。マイケ選手は一回戦の日本航空高校(山梨)との試合でも三番左翼手として出場し、四打数一安打で、先制点に絡む活躍を見せ、初戦突破に貢献した。
 本庄一高と青森山田高との試合は大会十日目(十一日予定)の第一試合。夏の甲子園で初の日系ブラジル人対決が実現する。

image_print