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滋賀県から交流使節団=デカセギ問題で意見交わす

ニッケイ新聞 2008年8月21日付け

 滋賀県の「平成二十年度ブラジル友好交流使節団」が七月三十一日から八日まで来伯。滞在中教育機関の視察等を行なったほか、一日夜にはブラジル滋賀県人会(山田康夫会長)会館でブラジル側関係者との座談会が開かれ、同県在住ブラジル人の状況、子弟教育などについて意見を交わした。
 交流団のメンバーは川崎功さん(高島市立マキノ東小学校校長)、広田幸子さん(東近江市立御園小学校教頭)、北川祐子さん(長浜市立南郷里小学校教諭)、永井しのぶさん(湖南市立水戸小学校教諭)、国実由香里さん(甲賀市立伴谷小学校教諭)、森本真智子さん(県国際課参事)、高木和彦さん(同主査)の七人。
 座談会にはブラジル側から吉岡黎明・ISEC(教育文化連帯協会)会長、五十嵐松酒早苗クリスチーナ(日本語教師)、中川柳田郷子(心理学博士)、松原礼子・サンパウロ大学文学部日本語講座准教授、山中イジドロ・元農務大臣特別補佐官の五氏に加え、山田会長ら県人関係者三人が参加した。
 最初に日本側出席者が現在の滋賀県内在住外国人の状況について説明。文化・習慣の違いにより日本に馴染めていないなどの問題点を話した。
 さらに、日本人生徒の保護者向けに説明会を開き外国人に対する理解を呼びかけている点、子弟向け取り出し教室などを実施して学力を高めるよう務めている点など同県での取組みを紹介した。
 ブラジル側からは、「努力だけでは教えることはできない。時間外で誰かが教えないと」「日本語を外国語として勉強するためには機能的に勉強をするべき」「日本国内で横の繋がりを密にするべき」といった意見。また「日本人の先生が教えるよりもバイリンガルの教師が教えた方が手っ取り早いのでは」「四技能(読、書、聞、話)がしっかりしていないと中途半端なバイリンガルが誕生する」と苦言を呈するものもあった。
 北川さんは「どういう風に教えるか模索している。どこの世界でも通用するような人を育成したい。そのためには特に算数に力を入れている。外国人は特に数概念や計算が遅い」と実際の指導に当たっての意見を発表。高木さんは「形はあるが、人が変わるとなかなか継続されない。終わってしまう」と現状を説明した。
 最後は吉岡さんが「日伯経済の違いによって今後のデカセギがどの方向に進んでいくかは分からないが、移動は終わることはないだろう」と述べ、「次にどういう対応をしていくかが大事」と締め括った。
 一行はサンパウロでスザノ日伯学園や日本語センターなどを訪問。三日からポルト・アレグレで公立学校などを視察後、八日に帰国した。

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