ニッケイ新聞 2008年10月14日付け
「中大型車では、もう日本よりブラジルの方が市場が大きい」。十日午後来社した川崎重工の汎用機カンパニー代表取締役、丹波晨一(しんいち)氏=本社・明石市=はそう語り、ブラジル進出に向けた期待感を表した。一〇〇%出資子会社カワサキ・モトーレス・ド・ブラジル(伊藤浩社長)をサンパウロ市に設立し、今月から同社が中大型二輪車販売を皮切りに、〇九年には五百万ドルを投資してマナウスに組立て工場を設置し、年間二万台生産を目指すと発表した。
伊藤社長は、「日本の中大型市場はかつて七十万台だったが、現在は二十万台以下。ブラジルの方が大きい」と進出理由を述べ、さらに「世界の中でも欧米に次ぐ、最も有望な市場として認識しており、将来的は五十万台まで拡大する可能性がある」と推測する。
ブラジルの二輪市場は拡大傾向にあり、〇八年の再選台数は二百万台を突破すると予想されている。うち排気量二百五十CC以上の中大型車市場は一割、二十万台という。
まずは世界に誇る二輪主力モデル「Ninja」シリーズ、ATV(バギー)やジェットスキーの販売をてがける。ディーラー第一号店「Number One」は十五日にサンパウロ市に開店する。
丹波代表取締役は「あくまで高級車路線でいく」と宣言し、他社が圧倒的なシェアを持つ小型車部門への進出は考えていないという。「欧米に続く第三の柱にしたい」と期待を込めた。
伊藤社長も「量より質が鍵」と強調する。まずは販売網およびアフターサービス体制作りに専心し、「最初は中大型市場でシェア五%を目指す。次は一〇%」。来年から稼動開始するマナウス工場では月産二千台、年間二万台余が完売すれば一〇%が達成される。
カワサキ・ド・ブラジル社は一九七三年に設立されており、発電設備、産業ロボット、鉄道車両のサービスを提供するなど全社的窓口を担ってきた歴史がある。今回は二輪部門に特化した同モトーレスを立ち上げた。来年、工場が稼動すれば同社初の製造拠点となる。以前から代理店を通して二輪販売をしていたが、最近は年百台程度だった。
サンパウロ市=川重2輪部門進出祝い=新工場設立記念パーティ
カワサキ・モトーレス・ド・ブラジル(伊藤浩社長)の新工場設立記念パーティが、九日午後八時からサンパウロ市内ブッフェ・コロニアルで行われ、関係者など約五百人が集まって祝った。
最初に同社の紹介ビデオが流され、続いて丹波・汎用機カンパニー代表取締役が、同社の歴史を説明した。マナウス工場に関し、「来年半ばの生産開始を目指していく。皆様の協力をよろしくお願いします」とあさいつした。
続いて、カワサキ・モトーレス・ド・ブラジルの伊藤社長は、川重が当地で三十年以上も営業してきた歴史に触れ、「これからは二輪でブラジル発展に寄与する」と話した。
その他、パウロ・ミズシマBNDES南部地域統括、セルジオ・レーゼFENABRAVE会長(バイク生産・販売連盟)、モアシール・アルベルト・パエス二輪車生産協会会長などが喜びの祝辞を寄せた。また、元F1ドライバーのエメルソン・フィッティパウディ氏を含む四人のディーラーを紹介した。
飯星ワルテル連邦下議が「ヴィバ、サウーデ、乾杯」と音頭を取り、夕食会が行われ、関係者は夜中まで歓談を楽しんだ。