ホーム | 日系社会ニュース | ブラ拓、南銀の軌跡伝える=サンパウロ市=レアル銀行資料館で公開=19万7千点の史料を収蔵=「忘れられた歴史ここに」

ブラ拓、南銀の軌跡伝える=サンパウロ市=レアル銀行資料館で公開=19万7千点の史料を収蔵=「忘れられた歴史ここに」

 百周年の機会に、ブラ拓銀行(カーザ・バンカリア・ブラタク)や南米銀行の資料が、サンパウロ市セントロにあるレアル銀行資料館で整理分類され、研究者などに公開されている。資料の劣化を防ぐように空調を完備しており、日系画家の絵画など約五百点も収蔵されている。十一日に見学した山下譲二文協副会長は「いずれも貴重なもの。日本移民が大事に資料収集した気持ちを、銀行が代わっても受け継いでくれていると感じた」と喜んだ。
 レアル銀行の資料館とはいえ、全収蔵品二十万五百四十九点のうち南銀・ブラ拓関係は十九万七千百五十一点と大半を占め、内訳は書類七万五千六十一点、写真十一万千九百八十七点、映像(ビデオ、フィルム)七百五十六点、物品九千三百四十七点となっている。
 書類にはバウルー、マリリア、バストスなどのブラ拓銀行支店の戦前の収支決算書などもあり、日語文書もかなり混ざっている。日本移民史料館の元副館長の中山保さんらが通って文献に目を通し、同元館長の大井セリアさんが手伝って整理分類をした。
 一階部分には書類や物品を納めた部屋があり、高さ一メートル以上ある五重塔、写真アルバム、移民七十周年時の記念品などが収蔵されている。
 三階は美術品の収蔵庫で、全収蔵品八百八十点のうち、南米銀行から受け継いだ五百点以上は日系作家のもの。芸術家育成に理解の深かった南銀ゆえ上永井正や間部学など貴重な作品群がある。
 レアル銀行の文化収蔵品コーディネーター、エリ・デ・ヴィリスさんは、「スダメリス銀行を買収した時、南銀の史料も引き継ぎました。貴重なものだと気付き、なんとかしなくては、と始まりました」と整理分類が始まった経緯を説明した。南銀時代にも行われていなかった事業であり、歴史や文化に理解の深い同行ならではの取り組みといえそうだ。
 〇四年に作業を始め、資料整理専門会社Expomus職員と契約し、〇六~〇七年に南米銀行の分、〇七~〇八年にスダメリス銀行分の作業を終えた。〇七年から研究者向けに公開している。
 同資料館(Av. Alvares Penteado, 160)が創立されたのは一九七〇年代。イタリア系コミュニティと関係の深かった旧イタロ・ブラジレイロ銀行の本社として一九二〇年代に建築された歴史的建造物内部に作られており、イタリア国立銀行もスダメリス銀行が買収した。その後、南銀を合併したことから、資料館にはイタリア系とゆかりの深い資料もある。
 収蔵品の一部は、パウリスタ大通りのレアル銀行本店で五月から七月まで行われ、好評を博した百周年記念展示「私たちひとりひとりの日本」でも公開されていた。
 大井さんは「南銀創立者の一人で、文協会長にもなった宮坂国人さんに関する資料など、コロニアに関係のある貴重なものがたくさんある。忘れられた歴史の一部がここに保存されている」とその意義を説明した。

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