ニッケイ新聞 2008年11月25日付け
『第十四回全伯日本語スピーチコンテスト』(国際交流基金サンパウロ日本文化センター主催、西田和正所長)が、二十二日午後一時からサンパウロ市の同センターで行われ、ブラジリア地区代表のヴァルデイルトン・ロペス・デ・オリベイラさん(22)が栄冠に輝いた。ロペスさんは、「日本語で生活するということ」をテーマに実体験を堂々とスピーチ。昨年に引き続き非日系人の優勝となった。今年は七人の日系人を含む十三人が出場。スピーチの出来もさることながら、全体的に会話能力も高く、「審査は大変難しかった」と審査員たちを唸らせるコンテストとなった。
今年はサンパウロ、リオ、ロンドリーナ、ブラジリア、ポルト・アレグレ、サルバドール、ベレン、マナウスの八地区から、地区大会で優秀な成績をおさめた十三人が出場。スピーチの内容、表現技術、文法、語彙の適切さ、発音、スピード、聴衆意識度、会話力などが総合的に審査された。
松原礼子審査委員長(サンパウロ大学文学部日本語学科助教授)は講評で、「頭を痛めながら審査しました。自分の経験を通した話が多くて良かったですね。もう少し大きく話して欲しいと思う人もいたけど、その他には何も指摘することがないほど良かった」と絶賛。
その中から見事、一位の座に選ばれたロペスさんは、ブラジリア連邦大学で日本語を勉強する三年生。今年行った二カ月間の日本研修について、ジェスチャーを交えながら、「京都の金閣寺を見ていたら雪が降ってきたんです。そのとき自然に『きれい』という日本語が出てきました」。日本語で生活するということを実感し納得したという。
満面の笑みにうっすらと涙を浮かべて優勝を喜び、「教授になりたいです。日本語を学べる機会を作り、多くの人に教えたい」と流暢な日本語でインタビューに答えた。
二位のレナタ・マユミ・オノギさん(22、二世、マナウス)は「初めての魚釣り」と題して、魚釣りを通した父との温かいやり取りを優しい口調で話し、観客に感動を呼んだ。
会場を終始笑いの渦に巻き込んでいたのは、大好きなクリーム・レケイジョンについて話したサンドロ・フレイタス・ミランダさん(21、ブラジリア)。チーズの歴史から、サンドロさん一家とクリーム・レケイジョンの関係、容器の「割れても悔しくないけど使えるコップ」に至るまで様々な角度から話し、表現技術賞に輝いた。
「日本―伝統と現代の調和」をテーマに「京都と東京に象徴されるような伝統と現代が調和している日本の魅力」を述べたマテウス・デ・ソウザ・エスコバルさん(19、ポルト・アレグレ)は三位に。「日本の大学院で科学を研究したい」と夢を持つ。
同じ舞台で競った参加者らは、コンテスト中「がんばれ」と互いに励ましあい、発表後も賞に関係なく「お疲れさま」と声を掛け合い、達成感を分かち合っていた。
審査員は松原助教授(委員長)、西田所長、武田幸子在聖日本国総領事館広報文化担当副領事、吉川真由美エジナ同センター専任講師主任の四人。
三位までの入賞者にはトロフィーと電子辞書、特別賞入賞者には賞状と図書引換券百レアル分が贈られた。また、優秀者の中から日本での研修生が選ばれる。
その他の受賞者は次の通り。(敬称略)
【きれいな日本語賞】辻須磨香パトリシア「私達のおじいちゃん」【感激賞】エレナ・ミツエ・コモリ「日本研修に行って思った祖父母達の気持ち」