ホーム | 日系社会ニュース | 悲鳴上げるブラジル学校=長野県=親の失業、帰国で生徒激減=公的支援得られず運営圧迫

悲鳴上げるブラジル学校=長野県=親の失業、帰国で生徒激減=公的支援得られず運営圧迫

ニッケイ新聞 2008年12月13日付け

 【信濃毎日新聞】急速に進む企業のリストラで、長野県内の日系ブラジル人の子どもたちが通うブラジル人学校の生徒数も激減、経営者が悲鳴を上げている。主に製造業の派遣社員で働く保護者が失業し、授業料が払えなくなったり、帰国を余儀なくされたりするケースが続出しているためだ。学校側は授業料の減免などで対応するが、決め手は見いだせていない。
 「何人減るか、分からない」。上田市のブラジル人学校「ノボ・ダマスコ」の竹村エリカ校長(40)は不安を隠さない。生徒数はこの一カ月で二十人減って約九十人。来年一月にはさらに四十人減る。きょうだいの二人目の授業料を三分の一免除しているが、分割払いを求めたり、支払いが遅れたりする家庭が相次ぐ。
 同校は教師十五人を半分程度に減らすことも検討しているが、「一番かわいそうなのは子どもたち」と竹村校長。「登校したくてもできず、泣いている生徒もいる」「ポルトガル語がわからないまま帰国すると、現地の学校で学年を下げなくてはいけない」…。
 伊那市のブラジル人学校「コレージョ・デザフィーオ」も、十一月初めに約八十人いた生徒がこの一カ月で約四十人に急減。飯島ヨシムネ校長(41)によると、帰国した家族がいる一方、授業料が払えずに自宅で過ごしている生徒も二十人ほどいるという。
 おやつを含む四食付きで月四万五千円の授業料を今月から約三万円に下げ、月約二万円で半日学ぶこともできるようにした。経営は圧迫され、今月からブラジル人教師七人の給料を四割削減。授業のない来年一月は、ほぼ全員を無給の休みにする方針を決めた。
 塩尻市のブラジル人学校「ロゴス」も六十人ほどの生徒が二カ月ほど前から減り始め、現在は約四十人。一月以降に最大で授業料の半額を免除することも検討するという。
 こうした状況に県国際交流推進協会(長野市)は一日、県内十校のブラジル人学校を聞き取り調査。ほぼ全校が一月以降に生徒数が減るとの見通しを示した。ただ、多くが有限会社経営や個人経営のため公的支援は期待できず、ブラジル政府からの援助も望めないという。
 日系四世の女性(20)=須坂市=は、上田市のノボ・ダマスコに九歳と十四歳の弟二人と自身の一歳の子どもを通わせる。北信の同じ企業で働く両親と夫のうち、今月末で母と夫の派遣打ち切りが決まり、父親も先が見えない。来年二月に子どもや弟と帰国することを考えている。
 日本暮らしが長い弟たちはポルトガル語がうまく話せない。だが、「帰国できるわたしはまだいい。帰るお金がない人はたくさんいる」。日本で行き場を失いかねない子どもたちの行く末を心配した。

image_print