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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年12月23日付け

 あれからもう41年が過ぎた。あの日、パカエンブー競技場には払暁にも遠い午前3時ごろに貸切バスに乗った老移民たちが次々に押し寄せ混乱するほどの熱気に包まれ、朝の冷気を吹き飛ばすような情景は今も目に浮かぶ。67年5月25日は皇太子さまと,美智子妃殿下を歓迎する日であり、パカエンブーには8万人の移民と日系人が満ちた▼宮坂国人氏は幾別春の俳号で「秋深し皇子迎えて国人泣く」と頬を濡らし、移民の多くも滂沱の涙である。あの頃、天皇陛下は若く元気溌剌。美智子さまは清楚を絵にしたように美しく、病に倒れた2世の少女に激励の言葉を揮毫して贈り移民からの大いなる拍手も懐かしい。その今上陛下が、医務主管から胃炎と診断され今―療養に努めておられる▼胃腸が爛れ炎症を起こしているそうだけれども、病の原因はストレスとされ皇室の将来などについて思い悩んだのではないかの指摘もある。宸襟のうちは知るよしもないが、近頃は保守派の論客からも鋭い皇室批判があったりもするし、皇族の方々もかなり苦しいお立場にある。これら諸々が積もり積もって体調を崩されたのであれば、これはもう真に残念であり申し訳ない▼こうしたご病状に配慮し誕生日を前にしての記者会見をお取り止めになったし、新年参賀の応対回数も減らすと決まった。これは致し方がないにしろ、この会見ではいろんな事柄について積極的に語られるのがこれまでの常なので記者団は「なんとかお願いしたい」の声も強い。その天皇陛下の誕生日はきょう12月23日であり75歳になられる。  (遯)

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