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国会図書館=ブラジル移民の電子展示開始=百周年とアマゾン80周年記念で=貴重な写真、資料も続々=サイト上で自由に閲覧可

ニッケイ新聞 2009年3月6日付け

 国立国会図書館がブラジル日本移民百周年とアマゾン入植八十周年を記念して、サイト内に電子展示会「ブラジル移民の100年」(www.ndl.go.jp/brasil/)を四日に開設した。これほど大規模な移民関連のサイト展示は初めて。インターネット環境があれば、誰でも無料で利用できる。全七章編成で、各節には参考資料として、貴重な写真や記事などが見られるようになっており、百年の歴史を俯瞰できる。なかでも重要なのは、珍しい写真や文書、動画など二百点の資料へのリンクが張られている点だ。現在来伯中の、同図書館主題情報部の眞子ゆかり占領期資料係長は「常設ですので、じっくり読んで移民理解の参考にして欲しい」と呼びかけている。

 〃移民の父〃水野龍の回想記の第二部も閲覧できるようになっており、笠戸丸出港の様子が生々しく記されている。
 「愈々出発の日、四月二十八日は到来した。当日は神戸、東京間の電信が不通となる程の春の日の大雪であつた。移民達は、宿舎を出て、雪の中を荷物の重さにも負けずに波止場へと急ぐ。女も子供も男達は負けずと旅屋の使用人などに援けられながら列に加はつた。ブラジルへ、ブラジルへ、起運の野望、雄渾な南の志、失意のどん底から起ち上らうとする勇猛心、自棄破境の心魂、疲れ果てた肉体と精神―移民達は思ひ思ひの夢を抱き或は悲しみを包んで笠戸丸の船室へと吸ひ込まれて行く。だが然し今は過去の総てを清算して新たなる人生への再出発点に立つ彼等である」
     ◇
 同図書館では八四年からブラジル、ペルー、ハワイ、北米に職員を派遣して日系移民資料の収集をしている。同憲政資料室には約千冊の移民関係図書があり、それ以外に一般図書もあるので「全部で何冊あるか分からない。やはりブラジル、ハワイ関係が一番多い」(眞子係長)という。
 その豊富な資料を駆使して百年間の概要をまとめたのが、この展示だ。出典資料にもリンクが張られているので、その場で記述内容を確認できるので非常に便利だ。
 アマゾニア産業研究所が作成した広報用フィルム『大アマゾンを拓く』などの動画も閲覧できる。三〇年の上塚司団長らの第二回アマゾン調査団、ヴィラ・アマゾニアでの入植祭、立柱式、斧下式、山焼き、播種器による播種風景などが映っている貴重なものだ。
 また、参考図書の一部が「近代デジタルライブラリー」とリンクされており、原典を画像で閲覧することも一部可能。さらに「笠戸丸」「巨大農協―コチアとスール」「アマゾンに闘いを挑んだ無敗のコンデ・コマ」などの十種類の気軽によめるコラムもある。
 なお、この展示にはニッケイ新聞の前身、パウリスタ新聞の記事もあちこちに展示されている。ポ語頁(www.ndl.go.jp/brasil/pt/index.html)も併設されており、こちらも日系学校教育などで使えそうな貴重な資料だ。
 国会図書館ならではの豊富な資料を駆使した展示となっており、インターネット環境のある人には堪えられない移民展示といえそうだ。

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