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■ひとマチ点描■53年ぶりの感激の再会

ニッケイ新聞 2009年3月21日付け

 ふるさと巡り参加者同志で偶然の出会いがあった。1956年9月11日にサントス到着のオランダ船チサダネ号の同船者が、リオ市のコルコバードの丘に登る登山電車の駅で、下船以来、実に半世紀ぶりの再会を果たした。
 渡辺文子さん(82、福島)と再会したのは、上原正一さん(74、沖縄)とその妻トヨさん(71、同)、弟の上原正昌さん(69、同)の3人だ。
 トヨさんは「桑鶴さんがダーバンで、よその軍艦に上がって大砲ぶっ放して裁判になり、終わるまでそこで一週間またされた。結局は『外国で勉強中』とのことで無罪放免だったけど、一時はどうなることかと心配したね」と鮮明に思いだす。今でこそ笑い話になったが、当時は大変な話題をコロニアに振り舞いた一件だ。
 そんな思い出で話が弾み、正一さんが「うれしいですね、53年ぶりで」というと、渡辺さんも「半世紀は長い。よかった。滅多に会えない」と固い握手を交わした。
 お互い若かった半世紀前に過ごした船中の日々の記憶は鮮烈だ。移民にしか分からない〃同船の絆〃は、かくも強い。(深)

写真=左から渡辺文子さん、上原正一さん、トヨさん、マダレーナさん(正昌さんの妻)、正昌さん

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