ホーム | 日系社会ニュース | 南米の広島方言を調査=中東准教授が半年かけ=成果の一部を基金で講演

南米の広島方言を調査=中東准教授が半年かけ=成果の一部を基金で講演

ニッケイ新聞 2009年10月3日付け

 国際交流基金サンパウロ日本文化センターは9月19日午後同センターで、岡山大学大学院准教授の中東靖恵さん(広島)を講師に招き、講演会を開催した。日本国内および海外日系社会の日本語におけるアクセントの継承と変容―日本・ブラジル・パラグアイの広島県人」というテーマに約20人が耳を傾けた。
 近年、日本ではテレビなどメディアの影響から著しく各地方で共通語化が進むアクセント。伝統型アクセント(三拍名詞では中間が強い)から新しいアクセント(語頭が強い)に交替しつつあるという。
 中東准教授は、今年4月から半年間かけブラジルとパラグアイの広島県人を対象に、広島方言におけるその変容を調査した。講演の中では音声を流しながらアクセントの違いを確認する場面もみられた。
 ブラジルでは広島県人会の協力を得て、アラサツーバ、プレジデンチ・プルデンチ、バストス、マリンガで実施された。64人に調査を行った統計結果からは、戦後生まれの世代からその伝統的なアクセントが失われ始めていることが確認された。
 県別移民数では広島県が第6位のパラグアイでは、ラパス移住地で44人を対象に調査が行われた。1970年代以降生まれの人に、新アクセントが多くみられた。
 今回の調査の結果から、中東准教授は「広島県人のアクセントの共通語化は、同地でも日本と同じように起こっている」と考察。「その変化は、日本同様メディアの影響を受けるのではないか」と判断し、「急激な変化は好ましくないのでは」と懸念した。
 講演会に参加した北原里美さん(佐賀、20)は、「日本では気に留めなかったアクセントだが、日系人との比較がおもしろい。興味が持てた」と感想を話した。

image_print