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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2009年10月15日付け

 「一世の減少、デカセギによる青年層の不在が日系団体を弱体化させた」と言われて久しい。戦前に多くが入植、日系地盤の豊かなノロエステ、リベイラなどでも活発に活動する団体は半分ほどではないか▼100年史編纂委員会が全伯日系団体に調査表を送った。しかし、回答が返ってきたものは100あまり。それだけで活動実態を云々するのはいささか乱暴だが、かつて言われた「全伯日系450団体」はもはや過去の話であることは間違いない▼そんななかで気を吐いているのがブラジル最北の日系団体「ロライマ日伯協会(ANIR)」だ。今年9月にはアマゾン移住80周年式典、第二回となる日本文化週間も実施、約1万人が来場した。創立はなんと昨年6月、会員家族数は30だという。同地日系人をまとめていた父、辻一夫さんの遺志を受け継いだクラリッセ会長は、「これからも(同週間を)続けていきたい」▼今年7月に着任、同州初となるJICA青年ボランティア(日本語教師)の中西琴子さんは、「とても楽しい。みなさんの頑張りが凄いので私も手伝いたい」と電話越しに声を弾ませ、現地の盛り上がりを伝えてくれた。ANIRが経営する日本語学校の生徒数は現在50人、非日系が6割だとか▼「子供らに日本語を勉強して欲しいけど…」。コラム子が同州を訪れたのは2004年。他州から移住、大規模な米・大豆栽培を手掛ける二世らを取材したさい、彼らの多くから聞いた冒頭の言葉を思い出した。親ゆずりの開拓精神を漲らせながら、日系のルーツを伝えたいという思いを実現させた関係者にエールを送りたい。 (剛)

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