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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2009年11月11日付け

 明日12日は、天皇陛下ご即位20周年が盛大に祝われる記念すべき日。67年5月、皇太子ご夫妻(現天皇皇后両陛下)が初来伯された時の、首都ブラジリアでの有名な事件が思い起こされる▼早朝、殿下(当時)はこっそりと護衛をまかれて近くの川べりに自然観察に行かれた。弊紙の前身パウリスタ新聞から特派された名物記者、故上田鉄三氏がそれに気付いて追いかけ、殿下に直接取材し、〃暁の脱走〃との大見出しで報道したあれだ。その時の写真は日本はもとより、UPIやAPなどの通信社を通じて世界中で話題になったと、生前、上田氏から何度も聞いた▼その折り、ホテル・ナショナルで日系4連邦下議の一人として初めてお会いした上野アントニオ連邦下議(当時)は、そのエピソードを聞いて皇室への敬愛の情をいっそう深め、「明治の気風を受け継いでいる、勇ましい方だと思った」と述懐している▼移民70周年、両陛下が78年6月に北パラナをご訪問された折も、上野連邦下議は「とにかく珈琲にまつわるプレゼントを用意した」と思い出す。その熟した実を描いた日系画家の作品、その枝をかたどったブローチ、コロニア詩人がそれを題に詠んだ和歌の額などまさに珈琲尽くしだ。浩宮親王(現皇太子殿下)が自ら焙煎して淹れるのが趣味だというので、セットを探して美智子妃殿下に託して贈ったとも。その皇太子殿下が百周年で、ご来伯された▼97年に天皇即位後、陛下は再々訪伯された。1国に3度は例外中の例外だという。日系社会への温かいお心遣いゆえだ。大事な節目だけにコロニアからも喜びの気持ちを表したい。 (深)

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