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転機むかえるデカセギ=出入国政策懇談会=専門家受け入れ推進へ=日系人には独立生計要件=「一定の日本語能力」も

ニッケイ新聞 2010年1月23日付け

 日本の法務大臣の私的懇談会「第5次出入国管理政策懇談会」(座長=木村孟文部科学省顧問)は19日、新たな出入国管理政策策定に関わる報告書を千葉景子大臣に提出した。報告書は、専門知識や技術を持つ外国人への優遇措置を求める一方、日系人の入国・在留許可に対しては「独立して生計を営む能力があること」、「一定の日本語能力」が必要とするなど、実質的な厳格化の方針を提唱している。日伯間の人の流れを変えた1990年の改正入管法施行。20年目の今年、在日ブラジル人社会は大きな転機を迎えそうだ。

 「第5次出入国管理政策懇談会」は2005年10月に設置され、昨年12月までに23回の会合を開いている。
 このたび提出された報告書「今後の出入国管理行政の在り方」は冒頭で、日本の人口減少問題を踏まえ、「社会経済の活性化等の観点から、高度人材その他専門的・技術的分野の外国人材の受入れをより強力に推進する」ことを重視。学術研究や医師、弁護士、情報産業技術者、企業経営者などの人材受け入れを推進するための環境整備を求めている。
 受け入れにあたっては「学歴」「資格」「職歴」「研究実績」「(予定)年収」等の項目を点数化する「ポイント制」を導入し、一定水準に達すれば在留手続きの簡素化、在留期間の更新、永住許可に必要な在留期間の短縮などの優遇措置を設けることを提唱した。
 さらに医療・介護分野でも外国人受け入れ推進の必要性を挙げている。
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 日系人については、製造業の現場で働き、地域経済を支え、日本の経済発展に貢献してきたと位置づけ。一方で、文化的背景の違い等による地域社会との摩擦や昨年後半以来の不況で雇用・生活・子弟教育に関わる問題が深刻化していると指摘する。
 そうした状況を踏まえ、生活の安定のためには日本語の習得が必須であるとして、教育環境の整備や日系人の日本語能力向上を推進することを強調。「日系人等は我が国社会の活力を支える貴重な存在であり、これら日系人等が日本社会の構成員としての義務を果たし、自立した隣人として、日本人と共に生活していくことが重要である」としている。
 今後の受け入れ要件については、就職先や居所が確保されているなど「独立して生計を営む能力」を有しているかどうかを入国、在留許可等における考慮要素とする可能性を挙げる。
 さらに、日本語能力の不足が雇用・教育などにおける問題の要因になっているとして、日系人の入国・在留・永住許可にあたり、「一定の日本語能力」を考慮要素とする方向性を示した。そのため、日本語能力を測る基準として資格・試験の整備を進める必要があるとしている。あわせて、子弟の就学促進の必要性にも言及した。
 専門知識・技術をもった外国人の受け入れ推進を掲げ、日系人の入国・在留許可に関しては要件厳格化の方向性を示した同報告書。在日ブラジル人を今まで以上に日本社会の構成員として位置づけ、それに相応した意識の変化を求めるものといえる。
 現政権が進める製造業への派遣の原則禁止。経済危機で7万人の在日ブラジル人が帰伯する一方で、低賃金労働が社会問題となった「研修」ビザで入国する外国人は昨年1年間で10万人に上る。日本政府の支援金を受けて帰伯した人は、原則3年間は同様の在留資格で日本へ入国できない。日系人の訪日就労を支えてきた構図そのものが変わりつつある。
 同報告書を踏まえ、法務省は3月に出入国管理基本計画を策定、制度化に向けて動き出す。ブラジル日系社会を大きく変えたデカセギ現象は、大きな転機に差しかかっている。

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