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日伯コミックの〝神様〟競演か=手塚治虫とマウリシオ=「4月に詳細発表する」=裏方務める妻恵子さん

ニッケイ新聞 2010年2月20日付け

 日伯のコミックの神さまが競演?!――百周年で記念キャラクターを描いたブラジルを代表する人気コミック(世界のマンガ全般)作家、マウリシオ・デ・ソウザさん(74)は、日本の〃マンガの神様〃である故手塚治虫とは生前から懇意の仲であったことから、同プロダクションと交渉を進めており、手塚マンガの登場人物を描く許可をもらい、日伯を代表するマンガ・キャラが登場する画期的な新作を準備していることを明らかにした。「4月の会議の後に詳細が発表できるはず」とソウザさん。この機会に、美術監督をする日系二世の妻、竹田恵子アリッセさんにも人気の秘密を聞いてみた。

 ソウザさんは、ブラジル内のコミック市場の86%を独占する国民的な大家であり、昨年、作家人生50周年を祝った。その間にのべ10億冊も売り上げ、120カ国以上で刊行されているという。
 08年1月に首都ブラジリアでルーラ大統領臨席のもと行われた百周年開幕式で、ソウザさんはケイカとチカラという記念キャラクターを公にし、自らの人気コミックの登場人物として受けいれると発表した。いわば、『サザエさん』にブラジル人の登場人物が生まれたようなものであり、大きな話題になった。
 同年6月には、自身の最も人気のあるシリーズ『モニカの仲間(Turma da Monica)』を、日本のマンガ風にした新作『Monica Jovem』を発表し、若者層に大受けして毎月30万部を売り上げるヒット作になっている。米国『スヌーピー』的な画風の通常のモニカ(7歳)に対し、新作は15歳に成長したセクシーな服装の少女で、恋愛に悩むストーリーという作風の違いがある。
 ソウザさんは、日本でもオラシオというコミックを70年代に「いちご新聞」に掲載していた。現在は中国政府からの依頼で、児童向けの学習用教材として使える作品を検討している。「ニューズ・ウイークから〃ブラジルのディズニー〃と呼ばれたよ」と笑う。
 サンパウロ市バラ・フンダ区にあるソウザさんのプロダクションを訪ねると、入り口にはいきなり鳥居。その中には約150人が働いており、コミックは作画家40人の流れ作業で行われており、ショッピングセンターのイベント、映画、インターネットの事業部もあり総合娯楽産業となっている。
 作画家の30%が日系人で、全体の美術監督を務めているのが二世の妻、竹田さんだ。父は奈良出身、母は北海道出身だという。『Monica Jovem』を始めた時に技術的な困難はなかったのかとの質問に、「むしろ、自分の作風に戻った感じよ。だって私は『少女フレンド』を読んで育ったから」とほほえむ。
 加えて「日本にも5~6回行ったことあるわよ。両親がよく演歌歌っていたし、小さい頃は日本が祖国ぐらいに思っていたけど、実際に行ってみて私はブラジル人だったと思い直したわ」との経験をのべた。ブラジルの国民的なコミックの裏方には日系人がおり、触媒のような働きをしている。
 84年に初来伯した手塚治虫と会ったソウザさんは、翌年、国際交流基金の招聘で訪日して〃神様〃と再開し、生まれ故郷の宝塚にも連れて行ってもらった。その時以来、温めていた企画であり、〃日伯神様の競演〃を「今年は実現させる」と鼻息は荒い。

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