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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2010年3月27日付け

 先の日曜日に現代美術館の下にある骨董市に出かけ、インカの遺物と称する焼き物や織物などを見物し、いろいろと珍奇な品々に改めてびっくりする。ある小さなバラッカで柿右衛門の影響が濃いとされるヨーロッパで初めての磁器・マイセンに見惚れていると背中越しに肩を叩きながら旧友がニコニコしている▼30数年ぶりの再会であり、お互いに白髪が目立つ。若い頃の呑み仲間だが、仕事の関係もあって盃を共にすることもなく歳月は通り過ぎてしまった。2年前かに引退したとかだったが「息子が結婚しないんだよ」と困ったような面持ちになる。もう不惑が近いそうだから、世の常からすれば、確かに遅い。けれども、こんな独身主義が、近頃は流行になっているらしい▼ちょっと難しい話になるが、日本の人口問題研究所によると、50歳まで未婚の人を「生涯未婚率」とし、1950年生まれの人で生涯独身の人の割合は5%。80年生まれだと23%、90年で女性の40%、男性は28%。これが2000年生まれになると、女54%、男43%が生涯独身になると予測している。つまり、男も女も人口の半分が勝手気侭?な独り者なのである▼知友にも独り暮らしが男女で5、6人もいる。それぞれに人生を満喫しているようだし、結婚はしないが愛人と高尚な晩餐や海への旅を楽しんだりもしている。まあ―、これはこれでいいのだろうけれども、この世の中に和製英語の「ハイミス」とか独り身の老紳士ばっかりが蔓延る生涯独身社会になる―と、思って見るだけでも、どうも薄気味悪く、おぞましい。(遯)

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