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村人の心をつなぐ記録映像=スザノ=「福博村75年の歩み」完成=上映・懇親会に5百人集う

ニッケイ新聞 2010年4月1日付け

 福博村が入植75周年を記念して製作した記念映像の完成記念上映会が、3月28日午前11時から、スザノ市イペランジャ区の同村会会館で開かれた。創設から戦前戦後の混乱を越えて発展してきた村の歩みをたどった同作品。当日は村内外から500人以上が参集して映像を懐かしみ、旧交を温めた。来年創設80周年を迎える同地では、3月13日に記念式典を行う予定だ。
 映像、写真とインタビューからなる記念映像「スザノ福博村75年のあゆみ 1931~2006」はDVD3巻、計3時間の作品。福博村会が企画、グラバソン・スタッフ社が撮影し、大浦文雄村会顧問が監修した。田中慎二さんが表紙の絵を手がけている。
 先亡者への黙祷に続いてあいさつした同上映会実行委員長の大浦さんは、同映像を通じ「現在村に住んでいる人、外に住む人がもう一度手を握り合って村の明日を築いてほしい」と語った。
 31年に原田敬太氏と古賀貞敏・茂敏兄弟の草分け2家族が入植して始まった福博村の歴史。語り部として映像に登場する大浦さんは、村の歩みを人間の一生にたとえ、日本語を読む世代が減る中、映像で記録を残すことの意義を強調する。
 06年9月の75周年敬老会から始まる映像は、バンデイランテの宿営地として栄えたスザノへ、29年のカフェ恐慌の影響で奥地から出た原田氏によって福博村が創設され、日本移民25周年の年に25青年会、子弟の教育を目的として日本人会が設立されていった歴史を紹介。
 その後、新国家体制下での日本語教育禁止、戦中の日本語学校、日本人会休止と代替組織としての産業組合、父兄会創設、戦後の活動復活など、ブラジルの歴史の中で村がたどった足跡を写真や村人・学校の元生徒たちへのインタビューで綴っていく。
 児玉兼次氏が土地を寄贈し、青年会が中心となった現在の村会会館の建設風景や、58年の落成式でのシュラスコの様子を写した16ミリ映像もあり、当時の活気を感じさせた。
 この日は半分の1時間半が上映され、休憩時間には、高齢者や草分け入植者、初期の大学卒業者、日語教師、市議など、19人の関係者に記念品が贈られた。村の最高齢者、102歳の森部トミさんも元気に会場を訪れていた。
 上映終了後は50年前の会館落成式を彷彿とさせる竹串のシュラスコで懇親会が開かれた。
 「落成式の時は今日の倍ぐらいの長さで焼いていましたよ」と振り返る上野ジョルジ福博村会会長は、「今回の集いで皆さんの連絡先が分かったので、来年の80周年はスムーズに案内できると思う。10年の締めくくりですから、できるだけ盛大な催しにしたい」と思いを語った。
 当日は撮影・編集にあたった畑勝喜さんも出席。スザノ市のヴァルテル・ビオ副市長や地元選出のジョゼ・デ・ソウザ・カンジド州議、森和弘ACEAS日系会長など地元来賓、千坂平通JICAサンパウロ支所長、日系団体代表も多数訪れた。

福博は心の故郷=再会喜ぶ来場者たち

 この日は南マット・グロッソ州ドウラードスから訪れた人もあり、会場のあちこちで数十年ぶりの再会を喜ぶ姿が見られた。
 食事が並ぶテーブルを挟んで「新ちゃん?」と大きな声を上げたのは、サンジョゼ・ドス・カンポスから訪れた鶴巻隆さん(59)。幼馴染の大浦新一さん(57)、昭さん(53)の兄弟と会うのは、福博を出て以来約40年ぶりだったという。「顔を見て分かりましたよ。昔はやせっぽちだったけどね」と笑う鶴巻さん。「皆が元気で会えるのは嬉しい」と話がはずむ。
 70周年の時以来という桜井幸雄さん(70)は60年から13年間同地で暮らした。「奥地育ちで学校も公立だったから、福博に来て初めて自分が日本人だと感じた」という桜井さん。「青年でここへ来て、結婚して、子供が生まれた。今も心の故郷ですよ」
 会館落成時に青年会長を務めていた渡辺義宗さん(81)は、「資金集めが大変で、金がかかりすぎると抵抗もあったけど、村会役員が賛成してくれて完成できました。あの頃は皆熱中して盛り上がっていました。大変だなんて思いませんでしたよ」と振り返った。
 79年にブラジルで初めて、福博へゲートボールを導入した故黒木松己さんの夫人、ふくさん(89)は40歳から約半世紀を同地で暮らす。「長く住んでいるから知っている人もいるし、住みやすいですよ」と微笑む。
 原田敬太氏の末っ子で66年にサンパウロ市のカトリック大学法科を卒業した原田芳郎氏(74)もこの日記念品を贈られた。現在も福博に住み弁護士として活動、「ここで生まれ、今もここに住んでいます」と笑顔を見せる芳郎さんは、「父は厳しい人で、一日中出かけていました。(戦中の)組合運営の時はガソリンもなく苦労したようです」と父親の姿を振り返った。
 懇親会は用意した500席で足りなくなるほどの賑わい。実行委員長として尽力した大浦さんは、「村という故郷を通じて皆が集まる、これが一番。ここから新しい福博を作ろうという手ごたえを感じた」と話していた。

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