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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2010年4月7日付け

 自分が見せたいものを相手に見せるのではなく、相手から求められるものを見せるのはかなり難しい。でも、これが今後の日伯関係の鍵だと痛感する。最近の日伯論談でも、ブラジルで成功する韓国企業を見習って、現地から本当に求められる製品を売る戦略を立て直すべしとの意見が出ていたが、その通りだ▼例えば3月8、9日にサンパウロ市内ホテルで行われた日本総務省とブラジル通信省によるブロードバンドワークショップでも、日本が見せたい先端技術と、ブラジル側が切実に必要としている技術のレベルがあまりにもかけ離れている印象を受けた。例えばLTEという次世代携帯電話の仕様で、100Mバイト以上の高速通信を可能にする技術などを一生懸命売り込んでいたが、当地は未だインターネットどころか未電化地域すらある超格差社会であることが考慮されていない▼ブラジルの説明を聞き、求められているのは高速通信ではなく、遅くても安定しており、一人の大統領の任期中(4年間)に全伯で普及が終わり、なおかつ現実的な値段のプロジェクトだと感じた▼その翌週11日からはサンパウロ市ビエナル館で、経済産業省が日本のゲームやアニメなどを紹介する「国際コンテンツフェスティバル」をやったが、週末にも関わらず閑古鳥が鳴いていたという。マンガ・アニメ関係のイベントに数万人の若者が集まるサンパウロ市で、本場日本から乗り込んで数千万円を投じてイベントを実施したにも関わらず、だ。現地の若者が見たいものでなく、日本が見せたいものを持ってきたに違いないと思った。日伯関係を盛り上げるには、このへんのズレを早めに修正した方が良いと思う。(深)

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